その畳の床(とこ)は、手縫いがされており、これまた珍しいもの。興味尽きない日々が続いています。
(畳の床から出てきた昭和13年当時の新聞。下はアップ写真)


畳の表替えをされる倉西畳店さんから宿題を頂いていた畳の縁(へり)の色柄も決まり、修繕の様子を見せてもらうために、菊川町にある倉西畳店さんへ行ってきました。そこでは、畳に関するさらに有益なことを学んだのです。
畳と床板の間に新聞を敷くのは、防虫やすき間風を防ぐためであることは、畳を搬出する際に、倉西畳店のご主人からおそわりました。今度は、畳表を外した後の畳の床に新聞が付けられています。
「なぜ、こんなところに新聞があるのですか」。私は率直に尋ねました。
ご主人は、こう説明されました。
畳は、人が足でよく踏む場所にへこみができる。このため新聞やござを畳の床のへこんだ部分に足して、表面を均等にするのだそうです。
確かに、新聞のほかに、ござの切れ端が床に貼り付けられていました。
それにしても、「徐州大会戦 愈々迫る」と、時代がかった見出しが躍る新聞が貼り付けてあるとは。徐州大会戦は、第二次大戦前、日中戦争中の大規模な戦闘のこと。そんな新聞を中に入れて、これまで人が暮らしてきたんですね。
ご主人は、さらにこう付け加えられます。
「(畳の)床自体、最初から変えていないのでは」。というのも、昭和8年建築のこの町家で、昭和13年当時の新聞が中にあることに加え、床が手縫いであるからです。
そして、そばにある機械縫いの畳を示されました。
(左が手縫い、右が機械縫いの畳の床)


そばにおられる奥さんも「古い畳と言っても、今どき手縫いされている畳なんて、まれやは」と力を込めておっしゃいます。
私は、なるほどとうなずきながら、奥さんは仕事のパートナーとして、よくご主人と外へ一緒に出かけられるのですが、ふだん仕事場でも、ご主人をサポートされているのだなと、感じました。
で、ご主人は「この古い新聞をお上げしましょうか」と聞かれました。
私は、一瞬迷いました。もらったとしても、どう保管しようか。
私は元にしておくのが一番と思い、
「新聞は、畳の床にまた貼っておいて下さい」と答えました。
歴史的な新聞を納めた畳は、表替えや縁付けを行った後で、元あった1階お座敷に戻されることになります。
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