(瀬田表具店のご主人)

2㍑入りの大きなペットボトルには、水が一杯に入っていました。
「これは、3年前の水ですよ。3年たっても色は変わらないんです」。
よく理解できないまま聞いていると、続けてこうおっしゃいます。
「寒の水は、腐らないんで、(ペットボトルに入れて)保存して使っているんですよ」。
(寒の水が入った2㍑入りペットボトル)

ご主人と、その息子さんからも、うかがった話を整理すると、こういうことなんです。
水は、糊(のり)を作る時に、よく使う訳ですが、これに雑菌が入ると良い糊ができない。
1年で最も気温の低い寒の時期の水を使えば、雑菌が発生しにくい、良い糊ができるのだそうです。
こんな話は以前にも聞いたことがあるな、と思い出したのは、酒造りや、かきもち作りのこと。いずれも、やはり雑菌が繁殖しにくい寒の時期に作業のピークを迎えます。
流し台や縁の下に大量に保管
「水は何か特別なものですか」と尋ねると、「寒の時期なら水道の水でいいんです」とご主人。
寒の水はふだんの仕事でふんだんに使うので、その時に取った水がペットボトルに入れて50-60本ほど蓄えてあるのだそうです。
その水の保管場所は、温度変化の少ない、台所の流し台の下や、縁の下だとか。
息子さんは、こう補足して下さいました。
「掛け軸や屏風などは、(少なくとも)50年、100年もたさないといけないです。そのために、糊は吟味して作っています。(水にもこだわるのは、お客さんに良い品をお届けするために)長年伝わる職人たちの知恵ですね」
【瀬田表具店さんの話は続きます】
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