これは、昨年6月にあかつき屋にお泊まりになった女性写真家田中紘子さん(福岡県在住)が、制作されたものです。田中さんは、ここにご宿泊中、夜の魅力的な佇まいに触発されて、今回この衝立作品の制作を思い立ったのでした。
(田中紘子さんが制作した春の花を配した衝立)

この町家が若手作家の創作意欲を喚起し、これまで手掛けたことのなかった工芸品・衝立の制作へと進展し、今回の展示が実現。若手作家のこの町家に寄せる思いに対してうれしく思うと同時に、この町家のさらなる可能性を感じて、希望が膨らみました。
田中さんは1979年、九州・福岡にお生まれになりました。昨年春から写真家としての活動を本格化させ、個展を開催する傍ら、お仕事では全国各地のワークショップの撮影などを行っておられます。作品は写真誌「写ガール」に幾たびか掲載されています。
(写真家田中紘子さん=ご提供写真)

昨年6月に金沢にお越しになった際、こちらで宿泊され、町家の雰囲気を楽しまれました。その中で、あかつき屋の夜の風景に心がとらえられたのでした。特に、玄関の電燈の光を受け止め、月のようにぽっかりと浮かんだ円窓が、印象深かったと言います。
私は田中さんがここにご滞在中、彼女の作品群をネットを通じて知り、その魅力を織り込んだ新たな作品制作を提案、田中さんは構想から一年近くの時間をかけて今回の衝立を手作りされたのでした。
田中さんは、この町家に展示することを意識して、木枠に貼られた和紙の上に、ご自身がこれまで撮影された桜や桃、ツバキ、カイドウなどの春の花とともに、幸せを運ぶ青いハチの写真を付けられました。
(衝立の夜の風景)

この作品を上がりの間に置いた途端に、お部屋の雰囲気が一変しました。何とも言えない、優しく、初々しい雰囲気が醸し出されたのです。背後の襖や障子ともマッチし、気品と華やぎも生まれました。
夜、ライトアップすると、艶麗な色を帯びて、作品はまた違った存在感をもちました。
お泊まりのお客様らは、その斬新な作品に目をやりながら「町家に似合いますね」などと感想を話されています。
街なかに加え、町家の室内でも感じることのできる春。若手作家の意欲作を間近にしながら、新年度も心新たにと誓ったことでした。
作品は今後一カ月間ほど展示する予定です。
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