そうした中で、心がほっと和むようなことに出くわしました。あかつき屋の近所の饅頭屋・山本観音堂さんで、ころころ団子作りが行われていたのです。
「ころころ団子?」私にとって、何ですかそれ、という感じですが、聞けば出産が近い女性のご実家が、娘の安産を願って作る団子(お餅)なのだとか。出来た団子は、ご親戚や親しい人に配るのだそう。
長年金沢に住んでいるけれど、そんな風習があったなんて初めて知りました。
(ころころ団子作りに精を出す山本観音堂さんのご主人と女将さん)

ころころ団子は、和菓子どころ金沢では昔から受け継がれている風習といいます。ころころ団子は、楕円形のおもちです。なんでも犬は多産で安産なことから、それにあやかり、妊婦さんが9ヶ月目に入ると、無事出産を願って、戌の日に親戚らに配るのだそうです。
そのお饅頭の数は、9,11、13の奇数とされているとか。
(出来たお団子は扇風機で冷まします)

(お団子は元気のいい子供が描かれた包装紙で包みます)

過日、山本観音堂さんでは、朝からご主人と女将さんが、お客さんから注文を受けて、ころころ団子作りに追われていました。つきあげたおもちを手際よく、楕円の形にしていきました。
そのお団子は、その後、冷ますため、棚に並べて扇風機で風に当てていました。
出来上がった団子は、元気な子どもを描いた包装紙で覆った箱に詰められました。
(同時にお赤飯も作られました)

このお客さんは、同時にお赤飯も観音堂さんに注文されており、作業場には出来上がったお赤飯もありました。
仕事が一段落すると、女将さんがいろいろと話して下さいました。
「私がお嫁に来た時は、毎日のように、朝の2時か3時に起きて、お団子作りをしました。数えきれないほど作ったもんですよ」。
でも、昨今の少子化の波と生活様式の変化もあって、「今は(ころころ団子の注文は)年に数件あるか、ないかです」と、話されました。
とは言うものの、何と言っても人のおめでたいことにかかわっているとあって、表情は明るく、お声に力がありました。
人は、お饅頭とともに人生の節目を刻み、苦楽を重ねていく。日々生きていくことの価値をかみしめることにもなりました。
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