あかつき屋で三連泊して今朝チェックアウトされたフランス人のPadiracご夫妻については、ご近所の方とのふれあいのほかに、さらに強く印象に残ったことがありました。それは、ともに兼六園に出かけ、冬の美しい名園の風情を楽しむことができたからでした。
中でも茶室のある時雨亭での時間は、秀逸でした。そこでお抹茶を頂くとともに、各お部屋でゆっくりと過ごしました。外は断続的に雪が降る日で、そのせいもあってか、この建物に足を運ぶ人は少なく、自分たちの場所のように、この茶の湯の空間を堪能しました。
特に窓外には、折からの雪で純白の世界が広がっており、心が洗われるよう。深閑とした空気の中で、名園と向かい合いました。
(時雨亭の外観)

(お抹茶を楽しまれるフランス人ご夫妻)

(お茶席から前方を望む)

今回のフランスのお客様とは、その出会いから劇的なところがありました。暴風雪となった今月17日に東京から金沢のあかつき屋にお越しになったのですが、その日は悪天候のためJRの列車の多くが運休となり、フランスのお客様は、無事に金沢に来れるのだろうかと危ぶんでいたのでした。
でも、そのPadiracご夫妻は、雪道を踏みしめながら予定より数時間遅れてあかつき屋にご到着になりました。防寒具に付いた雪を払って、あかつき屋の玄関に入って来られた時は、正直ほっとし、心から歓迎しました。
(13畳の広々としたお座敷)

(屋外に広がる雪景色)

(雪解け水を流すせせらぎ)

移動の障害となったその雪も、今は城下町金沢、そして兼六園で美しい冬の風景をつくってくれたのでした。
時雨亭は何度も足を運んでいますが、雪に包まれている中での訪問は、初めて。
特に目を見張ったのは、窓辺から見た外の風景。雪つりを施された木々は、雪を頂いて白く染められています。
地面はすっぽりと雪に覆われ、その雪の絨毯に切れ間をつくっているのは、雪解け水を流すせせらぎです。
静寂が支配する園にあって、そこだけ水の音がします。
暖かい時季には認められない、山里にいるかのような野趣さえ感じます。
時雨亭でのひとときは、そんな外の自然とも一体となったもので、身が引き締まるような、厳かな気持ちにもなりました。
ここを出る時、ご一緒したフランス人のご主人からは「グレイト エクスピアリアンス(経験)」の声が出ました。
日本から遠く離れた国のお客様が、もたらして下さった至高の時間と空間。
それは、邂逅とも呼べるものでした。
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