(搬出する畳にマジックで印を付ける倉西畳店のご主人)

畳の搬出作業を行われたのは、菊川1丁目で代々畳店を営む倉西畳店さん。
畳を取り替えるに当たって、店のご主人が、古い畳に手際よくマジックを走らせ、何かの文字を記していました。読みづらいのですが、それらの文字は、畳の位置の確認のほかに、畳と畳の間に隙間がある場合、その幅を分かるようにするためだそうです。
「何を書いているか、分からないでしょ」。私の隣で、畳店のご主人の奥さんが解説して下さいました。「この文字は、隣の部屋との境にある畳で、真ん中の畳であると書いてあるんですよ」。
(倉西畳店の奥さんが広げた畳の縁のサンプル集)

そんな説明をしながら、奥さんは私に、紺色地や金糸地などの布切れの束を広げてみせました。
「畳の縁(へり)はどんなのがいいですか」。
いきなり言われても困るなー、と思っていたら、
奥さんは「色によって、和室に向いたものがあれば、材質によって長持ちするものがあるんですよ」と言います。
奥さんによれば、和室っぽくするのであれば、柄や金糸があしらってあるものが向いているそうで、摩擦に強く、日焼けしにくいものというのであれば、ポリエステルのものがいいのだそうです。
随分とお詳しいと感心していると、奥さんは「最初、嫁に来た頃は、電話番しかしてこなかったんですけど、だんだんと覚えてきました。でも、主人にはいつも『間違ったことを言って』と、しかられているんです」と笑って言われました。
奥さんに「いつもご主人と一緒に出かけられるんですか」と尋ねると、奥さんは「(仕事の)補助とおしゃべり担当です」とあっけらかんと言われました。
その言葉を聞いていたご主人は「お客さんのところに行くと、(お客さんの)目が自分のところに向くので、やりにくいんです。(妻の)おしゃべりで、注意が散っていいんです。ただのにぎやかしですけどね」と手を動かしながら苦笑気味に言われました。
ご主人は、表だって言わないけれど、奥さんを頼りにしているんだなと、感じました。
畳を外して、古い床板がむき出しになった部屋は、やはり荒んだ雰囲気が漂いましたが、倉西畳店のご夫妻に、(有)嶋田工建の社長さんご夫妻も交えた会話に場は和み、ほのぼのとした工事初日となりました。
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