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あかつき太郎の町家日記

金沢町家ゲストハウス あかつき屋をめぐる出来事や思い、人とのふれあいなどをつづるブログ。街角の話題や四季折々の風情も紹介していきます。

あかつき屋のホームページはこちらです。

五月人形名札から予期せぬドラマ

お宿業を営んでいると、時として思いがけないドラマが生まれることがあります。先のゴールデンウイーク(GW)では、お客様とのやりとりから、全く予期せぬ人と出会うことになり、身も心も熱くなったのでした。

それは、あかつき屋の上がりの間に飾っている五月人形がきっかけとなり、それを販売している人形店(金沢市内)の84歳になるご主人とお会いすることになったのでした。五月人形の武者人形の台座には、私どもの長男の名前を記した名札を置いており、毛筆でその名をしたためた人が、人形店のご主人加藤清さんだったのです。

五月人形をそのお店で求めて以来、26年が経過して初めてその店のご主人とお会いし、その方が息子「光太郎」の名前を達筆で書いた人と分かったのでした。

何というめぐりあわせ。その数奇な顛末に私たちは深く感じ入りました。

(あかつき屋に飾っている五月人形。
右下には、息子の名前を記した名札)
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その物語は、ゴールデンウイーク半ばから1週間の予定でここにお泊まりのオーストラリアのカップルのお客様が端緒となりました。

5月7日の朝、お二人が五月人形の前から私を呼びました。「これと同じ名札を手に入れたいのですが、どうすればいいのでしょうか。手伝ってくれませんか」。
思いがけないお尋ねです。五月人形は、26年前に妻の実家の母が、長男の誕生祝いに買って下さったもので、その木でできた名札は、私の長男の名前が記され、後ろのねじ回しをひねると、オルゴールが鳴り、「こいのぼり」の歌が流れる仕組みになっているのです。毎年端午の節句の前には、上がりの間に飾り、お客様に楽しんで頂いています。
お話をうかがうと、そのカップルの女性パートナーのケイティさんが、オーストラリアに住む三人のお孫さんに上げるために、これと同種の名札が欲しいというのでした。

名札は五月人形とセットとなっているもので、名札だけを単体で求めるなんて、ちょっと聞いたことのない話。そんなことが可能だろうか、といぶかしく思いました。

とにかく、その人形店に行ってみよう、と私は思い、偶然にも思い出したそのお店「加藤人形店」の位置をネットで調べ、お二人をマイカーに乗せ、金沢駅西の割出町にあるそのお店へ向かいました。

(26年ぶりに訪問した加藤人形店)
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少し迷いましたが、20分余り走って、そのお店に着きました。「ごめん下さい」。私は先に玄関に入りました。

中から、ご年配の男の人が出てきました。私は、持ってきた息子の名前が書いてあるその名札を出し、「これと同じものが欲しいのですが」と、その方に言いました。

「これは、わしが書いたもんや」。その男性は即座におっしゃり、その方は、このお店のご主人であることが分かりました。

ご主人は今からちょうど26年前に、ここで息子の初節句の祝いで武者人形を買い求めた際、その名札に毛筆で息子の名前を力のこもった筆遣いで書いて下さったのでした。

今回は、私の関係でなく、お宿のお客さんのリクエストでここに伺ったことを伝えました。そして、同行したケイティさんは、三人のお孫さんの名前と生年月日をメモ書きした三枚の付箋をご主人に差し出しました。

ご主人は私たちの来訪に最初少し驚いたご様子でしたが、来意を理解されると、早速墨を摺り始められました。

(力のこもった筆遣いで名前を書かれるご主人)
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ただ肝心の木の名札については、最近使わなくなったとのことで、数がそろうか心配されましたが、奥様も一緒に探して下さって数をそろえられました。

二人の男の子用には、「こいのぼり」の歌が入った名札、一人の女の子用には「うれしいひなまつり」の歌が入ったものを使って、その表面にご主人は筆で力を込めて、それぞれの名前を書き上げられました。
ケイティさんは、中国系の人で、三人のお孫さんには、それぞれ中国名があり、無垢の木板には、漢字で名前が書かれました。

「最近(筆で名札に)書かんようになってなー」とご主人は、その出来栄えについては、謙遜するような口ぶりでしたが、どうして、どうして、心のこもった立派な書きぶりでした。

(出来上がった名札を前に記念写真を撮りました。
手前右側二人がオーストラリアのカップル。
手前左がお店のご主人。後ろに奥様)
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ケイティさん、そのパートナーのピーターさん、そして私は、その出来栄えに大いに満足しました。
その後、ご主人と奥様を交えて、出来上がった名札を前にして記念写真を撮りました。(つづく)

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