今回こちらも得がたい見聞をさせてもらったのは、スイス人ご夫妻を通じてです。ご夫妻は、あかつき屋に三泊四日されており、ご滞在中、時間があったので、ひがし茶屋街や尾張町界隈をご案内させてもらいました。その中で、こちらも金沢の伝統文化や作法に関する新たな発見をさせてもらいました。
(ひがし茶屋街を散策されたスイス人ご夫妻=写真掲載了解済、以下同じ)

スイス人のご夫妻はジュネーブにお住まいで、芸能関係のお仕事に携わっています。日本は初めてのご旅行です。
半日ほどを使って、ご夫妻を兼六園やひがし茶屋街などをご案内しました。その中で、ひがし茶屋街(東山)の散策は圧巻でした。
やはりご夫妻は、日本の伝統文化や芸能に関心をもたれました。東山では、伝統のお茶屋・懐華楼さんに入りました。屋内では、かつて芸者さんが唄い踊り、旦那さんらがそれを愛でたお部屋などを見学。いっとき、いにしえのその場にタイムスリップした感覚になりました。
見学が終わり、外に出ようとした時、玄関先でスイス人のご主人が足元にあるものに目を留められました。
「これは何ですか」。
それは、木桶でした。桶には、ひしゃくが入っていました。
(打ち水を楽しむスイス人のご主人)

ちょうど懐華楼さんの係りの女性がいらっしゃったので、この桶の役目を尋ねました。
その女性は「暑い夏に、辺りを涼しくするために打ち水をするためのものです。清めの意味もありますし、これからお店を開くという合図にもなるんですよ」とおっしゃり、通りに出て、打ち水を実演して下さいました。
そのパフォーマンスに触発されたのか、ご主人は、桶とひしゃくを受け取り、ご自身も打ち水に挑戦されました。お仕事柄というのか、その機敏で身軽な身のこなしに感心してしまいました。
帰り道に、三味線の専門店・福嶋三絃店さんに立ち寄りました。そこでは、奥様が特に関心を示されました。
奥様は、作曲もなさる人で、お店で歌舞伎勧進帳の楽譜や三味線のばちを購入されました。
(三味線を弾く奥さん)

お店の若奥さんとおしゃべりしていると、中から三味線の音が聞こえてきました。そうこうしていると、中から若主人さんが出て来られました。ご主人は三味線の音の調整をしている最中だったとかで、偶然にも勧進帳の曲を弾いておられたのでした。
興味を持ったスイス人の奥さん、三味線を渡され、見よう見まねで、ばちで三味線を奏でられました。初めてにしては、そのメロディーは不思議としっくりとくるものでした。(つづく)
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