ご近所のおまんじゅう屋さんの山本観音堂(以下「観音堂」)さん。今そのお店では、金沢ならではの風習・氷室まんじゅう作りに追われていました。毎年この時季ならではのお仕事とは言うものの、天候に微妙に左右されるようで、今年も細心の注意を払って作業に当たっておられました。
(まんじゅうの皮に黒餡を詰める作業)

藩政時代、加賀藩では旧暦6月1日に氷室の雪を江戸の将軍の元にまで届けたという歴史があります。それにちなんで金沢では、元気に夏を乗り切れるよう酒まんじゅうの氷室まんじゅうを食べる習わしがあります。
その時季を前にして、観音堂さんでは、氷室まんじゅう作りに忙しくなりました。酒まんじゅうというくらいですから、おまんじゅうにお酒の風味を加えるのがポイントです。
(ほいろという木箱におまんじゅうを入れて発酵を進めます)

(練炭こんろで下から暖めます)

この工程においては、観音堂さんでは自家製どぶろくを使って行っています。ただお酒は発酵食品ですから、温度管理が一苦労となります。
「今年はここ一、二日暑くなったけど、それまでいつもの年より気温が低かったわ」と観音堂のご主人さんはおっしゃいます。甕に入れて冷暗所に保存しているどぶろくの温度管理に気を使ったようです。
氷室まんじゅう作りは、このどぶろくをおまんじゅうの皮に練りこみ、そこに黒餡を詰めておまんじゅうの形にした後、これをほいろという引き出しがいくつもある木箱に入れて発酵を進めます。
この木箱の下に練炭こんろを置き、木箱を下から暖めます。
(せいろで蒸され出来上がった氷室まんじゅう)

「ガスの火だと、強すぎる。練炭だと火力が安定し、ちょうどいいんやは」とご主人。長年の経験から、おまんじゅうを発酵させるには、この方法が一番いいと体得されたようです。
おまんじゅうは発酵が終わると、今度はせいろに移して蒸して出来上がりとなります。
観音堂さんでは、次は出来上がったおまんじゅうをお客様に届けるための発送作業に追われることになります。
梅雨空の下、ほっと心が和む金沢の風習。
早いもので、今年も一年の折り返し点にさしかかっています。
スポンサーサイト