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あかつき太郎の町家日記

金沢町家ゲストハウス あかつき屋をめぐる出来事や思い、人とのふれあいなどをつづるブログ。街角の話題や四季折々の風情も紹介していきます。

あかつき屋のホームページはこちらです。

鏡餅、松の内終わり“第二の人生”

お正月には欠かせない鏡餅。それが松の内が終わり、いったんその役目を終えると、お餅屋さんによって新たな命がふきこまれ、“第二の人生”とも言える役割をもつことを知りました。

あかつき屋の近所のお餅屋「山本観音堂」(以下・観音堂)さんでは、お客さんに販売した鏡餅を松の内が終わった後、引き取り、それをつき直すなどして再びお餅にして、そのお客さんに届けておられます。
お客さんにすれば、鏡餅を正月のお飾りにした後、今度は紅白のおまんじゅうとして味わうという、二度の楽しみを味わうことになるのです。

(観音堂のご主人からお話をうかがうあかつき屋のお客様)
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鏡餅を扱う、お餅屋さんのそんな作業の工程をあかつき屋にお泊りになったお客様と一緒に、観音堂さんで見せて頂きました。外は雪混じりの空模様でしたが、中の作業場はご主人と女将さんの気持ちのこもった仕事ぶりで熱気に満ちていました。

鏡餅はお正月にはなくてはならないものですが、最近ではお正月が終わると、その処理に苦慮するところが少なくないようです。
これまで鏡餅はお雑煮などに使われていましたが、それが煩雑であるとして、鏡餅自体がビニールに砂糖が入ったものに代わったり、中にはガラス製に代用されたりしているようです。

しかし、やはり本来のお餅で作った鏡餅が主流であることには変わりなく、観音堂さんでは、近隣を中心にそれを作って販売されています。
ただ、上述したように、お正月が終わってからの鏡餅の取り扱いがどこもやっかいのようで、観音堂さんでは、そうしたところから鏡餅を引き取り、安価で食用のお餅につき直すサービスをしておられます。

(観音堂さんに持ち込まれた鏡餅=上、表面にカビが見える鏡餅=下)
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今年も仕事始めが終わった頃から、観音堂さんの近所の銀行や葬祭会社、飲食店などから鏡餅が、観音堂さんに相次いで持ち込まれました。
この鏡餅、硬い上に、ところどころカビが生えているので、まずそれを取り除く作業から始めることになります。観音堂さんは「カビが生えているのは、全然悪いことじゃないんです。防腐剤などの添加物がない証拠。取ればいいだけなんですから」とおっしゃいます。

(包丁でカビを切り落とします=上、餅を小さく切り、水に浸し柔らかくします=下)
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鏡餅はまず水に漬けて餅を柔らかくした後乾かし、包丁でカビの部分を切り落とします。その後、餅を切って5㌢前後の大きさにし、再び水に浸します。
柔らかくなったお餅は今度は、せいろで蒸し、蒸しあがったところで次は、餅つき機でもちをつきます。
つき終わったら、すぐに黒あんをくるみ、紅白のおまんじゅうに仕上げます。

(切ったもちは再びせいろで蒸します=上、蒸した後は機械でつきます=下)
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(つき上がったもちには、手際良くあんをくるみます)
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あかつき屋のお客様とともに観音堂さんに伺った時は、もちのカビを取り除き、適当な大きさに裁断して、水に浸すところでした。翌日は、これらを蒸した後、もちつき機でもちをつき、紅白のおまんじゅうに完成することになっており、それに向けて、慌しく立ち働いておられました。

でも、ご主人と女将さんはその合い間に、いろいろとお話をして下さいました。
「昔は、金沢市内に100軒ほど餅屋があったけど、今は60軒ほどに減ってしまった。(経営者が)年をとったとか、機械が傷んだとかという理由で、辞めていったんやは」とご主人。

そして何より、日常生活において以前ほどお餅を用いなくなったのが最大の理由とされました。
「前は、やれお祭りや成人式やと言うて、隣近所にお餅を配ったもんやけど。結婚式なら必ずお餅を作ったけど、今はそんなお金があったら、若い人は新婚旅行のお金に使うんやろね」。
ご主人は笑いながらおっしゃいましたが、ちょっぴり寂しそうにも見えました。
「わしらも体が続く限りは、しっかりやっていきたい」と、ご自身に言い聞かすようにおっしゃいました。

東京からお越しになった若いお二人は、思いがけないお餅屋さんの仕事場見学に興味津々の表情。いくつかご主人に質問をされる一方、年輪が刻まれたご主人の大きな手を見せて頂きました。

鏡餅が観音堂さんに持ち込まれて、一週間ほどで今度は紅白のおまんじゅうに生まれ変わりました。つきたてで、まだ温かく、柔らかいお餅は、観音堂さんの近辺のお店や事業所に再び届きます。従業員の方々は、出来立てのお餅に舌鼓を打ち、気持ちを新たに新年の仕事に臨まれていることでしょう。

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