それは、雛人形飾りが、季節の観賞用というよりは、先祖をしのび、現在の境遇に感謝し、そして我が子や孫の健康を願う、よすがになっているとの認識を強くする場面に出会う機会が数多くあるからです。
あかつき屋の近く桜町にお住まいの友人・山本裕之さん方も、それが如実に分かる雛人形飾りをされていました。先祖代々伝わる、お雛様の壇飾りをはじめ、奥様啓子さんがお生まれになった時に、そのお父様が整えられたという雛飾り、さらに奥様が手作りされた木目込み人形のお雛様もありました。
(山本さんの奥様啓子さんが手作りされた木目込み雛人形)


いずれも優美な姿をしているのですが、そこにご家族の深い情愛が感じられます。見ているだけで、いやされ、慎み深い心持ちになりました。
山本さんは、祖先が残されたものを大切にされる方で、現在のお宅には、年代物の長持も置いておられます。先祖から伝わるお雛様はもちろん大事に守っておられ、この度、旧暦の桃の節句に合わせて、お部屋に披露されました。
その奥様は長年、木目込み人形をなさってこられました。教室の先生もされるほど達者な方で、その腕前を活かして、手作りされたお雛様をリビングルームに飾られていました。
人形のお着物は、古着を使っておられますが、材料を吟味されているため、優美さの中に、風格と落ち着きが感じられます。その人形の台には、先述した長持を使っておられました。
(手作りされた木目込み人形をご覧になる奥様)

いくつかの木目込み雛人形のほかに、奥様がこれまで手作りされた日本人形なども見せて頂きました。細かなところまで注意を払った逸品の数々。その繊細な手さばき、心配りに感心するばかりでした。
山本さんご夫妻は、この3月31日にお嬢様を嫁がせます。東京にいた時、ちょうど一年前に発生した東日本大震災で絆が強まった彼と結婚することになったという娘さん。
ご夫妻は、そんなお嬢さん夫婦に、もしかして雛人形を贈る日がくるのではないか、そんな思いも抱いておられるように拝見いたしました。
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