でも、さすがにこの暑さのなかでは、片時でも涼を求めたくなり、笠舞地区で「清水(ショウズ)」と呼ばれる、湧き水が出ている水辺を訪れました。
(善光寺坂下の大清水)

小立野台の犀川側のふもとに位置する笠舞地区は、金沢市内でも有数の湧き水が出る個所が多いところ。特に段丘状の小立野台の側面は、水が湧きやすい地形になっているようです。
そんなことを知ったのは、妻が笠舞生まれであることが理由にあります。
妻は子どもの頃、暑い時期、ショウズでよく遊んだと言います。
「ショウズには、(山肌から)水がたくさん出てきていて、海水浴に近いことをしたことがある。カニも出てきたわ」
そんな思い出を話す妻の案内で、太陽が高くならないうちの今日午前に、笠舞の名水スポットに足を運びました。
その中で圧巻だったのは、地元では「善光寺坂下の大清水(オオショウズ)」と呼ばれるところでした。
ショッピングセンター赤坂プラザ(パレット)の裏手にありますが、家と家との間にある細い用水伝いの奥にあり、ちょっと分かりにくいところです。
しかし、着いたら思わず声を上げてしまいました。きれいとしか言いようがない、透明度100%の水が、台形状に広がっているからです。底がはっきり見えるので、水深がとても浅く感じます。
そこには先客があり、近くの主婦が、慣れた手つきで洗い物をしていました。
(大清水の表示板)

そばには、この清水について説明する表示板があり、それによると、「非常に冷水で、寒中の時、この霊水で口中をすすぐと、冷気が激しく、まさに鼻も欠けるかのように感じる」ために、「はなかけ清水」とも言われているそうです。
この清水の純粋さと神秘さを目の当たりにすれば、人に知られず、そっとしておいてあげたいという気持ちになりました。
(暗がり坂のショウズ)

妻が子どもの時に、よく水遊びしたというのが「暗がり坂のショウズ」で、笠舞本町にあります。
やはり山肌から水が流れ出ており、炎天下では、文字通りオアシスです。
以前は、この水辺にホタルが数多く舞ったそうですが、今は水量の減少とともに、その数はまばらになったようです。
ただ近くに青々と苗を伸ばした水田があり、この付近は市街地の近くにありながら、農村風景も残している地域と言えそうです。
笠舞のショウズ探訪は、小立野台地に沿っての徒歩行でしたが、途中、熱心にショウズの変遷について語る地元の人とも出会いました。
(石引温泉前坂道下のショウズ)

石引温泉前の坂道の崖下では、配管口から水が出ていました。
そのショウズのそばに長年住む年配の男性は「前はもっと水が出ていたけど、新しく道を造ったりすると、水の流れが変わるのかなー」と少し残念そうな表情で話されました。
それでも、ここが行政が関わって整備された場所であることから、工事の当時は何とか自然の湧水を残そうと、いろいろと知恵を絞ったのかもしれません。
(Aコープ笠舞店裏のショウズ)

笠舞1丁目のAコープ裏手にもショウズがあります。ここも土手の擁壁に手を入れ、湧水を流しています。
無機的な水の流れですが、ペットボトルがそばに置いてあるところを見ると、ふだんその水を利用する人がいるようです。
エコとか、景観保全が盛んに言われる昨今の世に生きる身の上なので、個々のショウズを間近にすると、いやが上にも、いろんな思いが胸の内に去来しました。
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