四季の美しい情景を描いた句の作品は、叔母の凛とした、しっかりとした筆遣いにより、際立った存在感をもっています。訪れるお客様はその書作品を味わうとともに、その背後に広がるお庭にも目をやり、金沢町家での秋の時間を楽しまれています。
(氷見の叔母の書作品が掲示された屏風)

叔母は富山県氷見市で生まれ育ちました。人生の半ばからは仕事の傍ら書道に励み、数多くの秀作を遺しました。その一つは、掛け軸の作品として、これまで折にふれて、あかつき屋で掲げてきました。
最晩年は、高齢もあって福祉施設で余生を過ごしました。
今回の屏風の作品は先日、四十九日の忌明けに、叔母の家から贈られたものです。
春水満四澤(しゅんすいしたくにみつ)
夏雲多奇峰(かうんきほうおおし)
秋月揚明輝(しゅうげつめいきをあげ)
冬嶺秀狐松(とうれいこしょうをひいず)
ある文献によると、陶淵明のこの作品は、次のように解釈されるようです。
春は水が 四方の沢に満ちる
夏は入道雲が 素晴らしい峰を形づくる
秋は月が 明るく輝いて 天にかかり
冬は嶺に 一本の松の緑が秀でて美しい
(屏風は背後のお庭と一体となり、絶佳の風景を見せてくれます)

この書作品は、文字で成り立っていますが、これに見入っていると、四季折々の美しい風景が目に浮かぶようです。
屏風の後方には、あかつき屋のお庭が広がっています。書作品と渾然一体となって、和を極める景観が現出されています。
お客様は、書に感嘆しながら、「時間が止まったように感じる」などと感想を語られていました。
叔母さん、ありがとうございました。安らかにお眠り下さい。
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