それは、毎年あかつき屋の上がりの間に飾っている五月人形の購入先であった加藤人形店のご主人夫妻が昨年亡くなったとの知らせをこのほど受けたからです。そのご主人は、私の父と同年配の上、お名前も「清」と同一。このため、加藤さんには、父親のような親愛感を抱いていたのでした。
(昨年他界された加藤さんご夫妻=2014年5月に撮影)

6年前にそのお店に、あかつき屋のお客様と伺った際、工芸の職人でもある加藤さんは、84歳という、ご高齢にもかかわらず意気軒昂、朗らかに木札に毛筆でお客様のお孫さんのお名前を記されました。この道一筋の人がもつ、自身のお仕事への気概と自負を感じさせるものでした。
その後、ここ5年ほどお会いすることもなく、いかがお過ごしかと思っていたのですが、今月初め、ご主人の次女の方から、加藤さんが昨年2月に亡くなられたこと、そして、その後を追うように、奥様が他界されたとの連絡を頂いたのでした。
あかつき屋に毎年5月に飾っている五月人形は33年前、私どもの長男が生まれたことを祝って翌年、妻の実家が贈ってくれたものです。その人形飾りには、初節句を迎える男の子の名前を記す木札が置いてあり、これを見て、外国のお客様が同様のものを手に入れたいと私にリクエスト。これがきっかけで、加藤人形のご主人と初めてお会いすることになったのでした。
(加藤さんが描いた「鍾馗(しょう き)」のタペストリー。
鍾馗は病魔退散、厄除けの効があるとされ、あかつき屋に掛けてあります。)

生前ご夫妻は、金沢駅前のマンションに住み、毎日バスでお店のある割出町まで通っていたと、うかがっていました。仲が良く、なんと健康的で素敵な老後。だから、お店の近くを車で通りかかった時は、加藤さんがいらっしゃるのではないかと、お訪ねしたのですが、玄関は閉まったままでした。
今、お二人の訃報に接し、胸中何とも言えない気持ちがあふれました。お仕事を通じて、庶民の暮らしに歓びと彩りをもたらして下さった加藤さんご夫妻。安らかにお眠り下さい。ありがとうございました。
スポンサーサイト