(酒樽相手に作業をするご主人・左 ふじた酒店の酒樽看板・右)


酒樽は、結婚式やイベントなどで使われる鏡割り用のものでした。「カビが生えたり、腐ったりしないようにしてるんやは」と、ご主人がおっしゃいます。鏡割りをした後、酒で濡れた樽の上部が、腐食しないよう、その部分を削っておられるのでした。
で、この酒樽の使い道を尋ねたら、お店の前に置かれている酒樽看板が老朽化した場合、その代わりにするものとのことでした。ふじた酒店さんの酒樽看板は、いわば店のシンボルと言えるもので、「嫁も字を書いたりして手伝ってくれている」(ご主人)手作り看板なのでした。
毎日目にするこの看板と言うか、一種のモニュメントが、このようにできている、とは知りませんでした。
(上げ底の2升瓶)

配給時代の歴史語る2升瓶
せっかくの機会と思って、先日町家の縁の下から見つかった2升瓶らしき瓶(2010年11月26日付ブログをご参照下さい)について聞こうと、いったん町家に引き返し、この瓶を持ってきて、藤田さんに尋ねました。
まず「これ、2升瓶ですかね」と私が聞くと、藤田さんは何の迷いもなく、「そうですよ」と答えられました。
「これに何を入れていたんですかね」と、さらに質問すると、「お酒ですよ」と、これもこともなげに言われました。
そして藤田さんは、子どもの頃を回想してこう説明されました。戦後間もない配給の時代によく見られた瓶で、その当時は酒が量り売りされていたとのことでした。
私は、この2升瓶は、形がユニークだから、飾り物にでもするつもりであると話したら、藤田さんは「これ、上げ底なんやよ」とおっしゃり、瓶の底を見せてくれました。
確かに、下側から見ると、瓶の底は上に向かって結構へこんでいました。
この2升瓶は、光を受け止めて幻想的な雰囲気を醸すことは、この前発見しましたが、さらに底にも特徴があるとは。歴史の生き証人とも言える酒店の高齢主人の話に耳を傾けていると、昭和の高度経済成長時代以前の世界に引き込まれました。
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