左官屋さんが担う土壁の塗り替えは、洋風住宅が主流になりつつある今、その需要が減少し、壁塗りの作業を見ることは難しくなりました。それに伴い、壁材料の種類も少なくなっており、そんな業界状況を今回の町家リニューアルを通じて図らずも垣間見ることになりました。

壁の塗り替えは、市内の田上町にある嶋田左官工業所さんが携わっておられます。その左官屋さんによると、新しい住宅で、土壁を使うケースは少なくなり、「新興住宅地の(内灘町の)白帆台や(金沢市の)瑞樹団地の家なんかは、8、9割はクロス張りじゃないかな」と嶋田左官さんは、おっしゃいます。
洋風住宅の中で、お座敷を造った場合でも、その壁は土壁のようなクロスを用いるケースが多く、左官屋さんの出番が減ってきているのは、事実のようです。
このため、壁材料の種類も少なくなり、今改修中のこの町家では、2階の壁について、従来どおり重厚さを尊重して黒っぽい色でいこうとしたのですが、現在、その壁材料がないそうで、いっとき墨を混ぜようかという冗談のような話も出たくらいです。
その後、適当な壁材料が見つかったので、その必要はなくなったのですが、それほど、壁の色の種類も少なくなり、結果、その色見本もごくわずかになりました。
1階の壁については、お座敷とほぼ同様のものが壁の色見本にあり、スムーズにいきましたが。
(1階の壁の色を決める際に参考にした見本)

しかし、左官屋さんは、そんなことはおくびにも出さず、黙々と丹念に小手を使って壁を塗っておられます。
壁塗りの作業を間近に見るのは、おそらく子どものとき以来ではないかと思いながら、明るい色に変わる壁を気持ちよく眺めました。
この業界は日本の伝統家屋を守るという目標もあって、技術向上の意識は高く、各種のコンクールを開いているようです。嶋田左官さんは、そのような競技会での上位入賞もおありのようです。
そんな研さんを背景にして、この業界の腕利きたちが現在、石川門とそれに続く長土塀の修復に取り組んでいるとのことです(2010年9月2日付ブログをご参照下さい)。
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