奥能登国際芸術祭の様々な作品を観賞した中で、いつまでもほのぼのとした余韻が残った作品がありました。それは、日置(ひき)地区の廃校になった小中学校の中庭に展示された旗(フラッグ)の数々でした。
これらの旗は、地元のお年寄りらが、この芸術祭の一環のワークショップで作成したものだそう。旗は中庭で円形に並べて掲げられていました。
(廃校舎の中庭に並んだ旗の作品群)

(校歌を記した作品も)

会場は丘の上にあるのですが、海に近いことから、海に題材を採ったものが多くありました。タコやカモメなど海の生き物をかたどったもの。漁船や岩ノリ取りする女性など、海辺の仕事にちなんだもの、珠洲を代表する景勝地・見附島と付近の海水浴場を絵にしたものなど、様々。
この会場付近の集落にお住まいの私たちの友人のお母さんは、廃校になった日置小中学校の校歌を旗に貼り付けました。
「海より出でて海に入る 日影たださす 丘の上 産土(うぶすな)の森 ほど近く わが学び舎は そびえたり」
ご高齢になっても変わらない母校への愛着と愛情が、じんわりと伝わってきました。
作品を作った大半の人が、高齢者だそうですが、どの作品も明るく、おおらかで、この奥能登の地で元気でお暮らしであることが、想像できました。
(会場敷地にある日置小中学校閉校記念碑)

奥能登については、簡単に過疎や少子高齢化の地と描写されがちですが、そうした環境の中にあっても、日々前向きに、仲良く暮らしておられる方が大勢いることも分かりました。
奥能登国際芸術祭。地元行政が主導して、初めて開催した一大プロジェクトですが、訪れる人はもとより、地元の人にも様々な成果を残しました。
とかく来場者数でイベントの成否を判断されがちですが、数字に表すことのできない手ごたえは、そこに訪れた人誰もが感じたことでしょう。 (奥能登国際芸術祭の項 終わり)
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