「さいはての芸術祭、美術の最先端」と銘打たれたこのアートの祭典。私たちは、あかつき屋の仕事の合間を縫って、会場を訪れました。予想以上に刺激的なアート作品の数々。珠洲への認識を新たにするとともに、この地が秘める可能性をも感じました。
珠洲は、金沢から車で2時間余り。この高速化の時代にあっては、日常気軽に足を運ぶことは容易ではなく、今も神秘性を内在した土地と言えるかもしれません。
(珠洲・飯田の旧映画館スメル館への通路)

(入り口は、若い人らで混雑)

(一階壁面には、懐かしい映画のポスターが並ぶ)

珠洲市内に在住する私たちの友人ご夫妻の案内で、珠洲の中心市街地・飯田を訪ねました。メーンストリートには、商店街が連なっています。
お目当ての映画館の空き店舗を目指しました。そこは、昭和末期まで営業した「スメル館」です。ここも、創作の舞台となっており、国内のアーティストが「シアターシュメール」とのテーマで、一階のステージや客席を使って、作品化しました。
来館者は2階から見学。暗闇の中、天井から珠洲名産の珪藻土の粒子が舞い落ち、これが調度類に降りかかります。映画館と能登の時間の経過を表現しているのだそう。
映画館にいるというより、どこかのテーマパークに迷い込んだような感覚になりました。
映画館であることを意識したのは、一階通路に古いポスターが貼ってあったこと。松田聖子主演の映画や黒澤明監督がメガホンを取った「乱」のポスターなどは、その時代に戻ったような気持ちになりました。
(旧家を創作の場にした会場)

(珠洲の風物を描いた大壁画)

この映画館からほど近いところに、古民家を会場にしたアートスポットがありました。山林などを所有した土地の有力者のお屋敷跡とのこと。
ここは、金沢美術工芸大学の学生と先生方が協働したプロジェクト「スズプロ」の作品会場。室内の壁面には、「静かな海流をめぐって」と題した大壁画がありました。
学生らが珠洲の住民から聞き取った、これまでの暮らしや生業を絵画化したもので、「奥能登曼荼羅」の名が示す通り、宗教的な味わいがありました。
この古民家には、この家の蔵に残されていた膨大なモノを組み上げて作った「いえの木」という作品もありました。そこに詰められた数々の「お宝」から、その旧家の商いの様子や繁栄の跡をうかがうことができます。
日本の高度経済成長期が終わって、賑わいが後退したこの商店街ですが、今に活かされる原石が数多く残っているのでした。
(つづきます)
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