先日、加賀の霊峰・白山で初冠雪があり、朝晩は、肌寒さも感じられるこの頃。金沢は秋が深まり、兼六園一帯や街角の木々は、紅葉が美しくなってきました。
ここあかつき屋も、すっかり秋モード。上がりの間では、小机に栗の実や松かさなどを置き、衝立には、童謡「赤とんぼ」を毛筆でしたためた掛け軸を掛けています。それらは目に優しく、静かな秋をそれとなく演出しています。
そんな日々の中で、うれしく、元気が出るお客様をあかつき屋にお迎えしました。東京からお越しになった女子大生3人さんです。研究調査の目的で金沢入り。金沢町家を活かしたこのお宿の運営等について関心をもたれたとのこと。お話しさせて頂き、質問にお答えしました。
【秋の調度類を整えた館内】
(栗の実や松かさなどと招き猫の置き物)

(童謡「赤とんぼ」をしたためた掛け軸)

来訪されたのは、中央大学(東京)法学部の工藤裕子教授が主宰する FLP 地域公共マネジメントゼミに所属する学生さんたち(三年生)です。地域資源の再発見・再評価を行いながら、これからの公共政策や地域経営を考えていこうとされています。3人は、「空き家の利活用」や「まちづくり」「地域ブランド」をそれぞれ研究テーマに設定されています。
あかつき屋に先立ち、市役所や金澤町家情報館でヒアリングされています。あかつき屋はゲストハウス(簡易宿所)に分類されますので、そうしたお宿はいくつか調査対象になっているのかと思ったら、あかつき屋だけを訪問先に選んだとのこと。
ゲストハウス、民泊等が、ざっと300あるとされる金沢。宝くじに当たったような気分で、大変光栄に感じました。
(ヒアリング調査に訪れた中央大学の学生さんたち
=写真掲載了解済、撮影のためマスクを外しています(^^;))

一年を通じて、ゼミ旅行や卒業旅行などで、数多くの学生さんをお迎えしていますが、今回の学生さんたちも目を輝かせて、私の話に耳を傾けて下さいました。
国登録有形文化財に指定されたこの建物のことや、周辺のお店や寺社などと連携したあかつき屋の取り組みを紹介させてもらいました。
コロナと向き合う日々ですが、地道に暮らしを営む人々がいて、変わらず前向きに学ぶ学生さんたちがいます。頼もしく、充実感を感じる時間でした。
中央大の皆様、ありがとうございました。また、お気軽にお越し下さいませ。
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10月も後半となり、いよいよ秋から冬にかけての北陸の旬の味覚が本番を迎えます。寒さが増す中で、カニ、ブリ、甘えびなどの日本海の幸や、レンコン、金時草、五郎島金時(さつま芋)などの加賀野菜は、いよいよ食卓の主役の座を占めることになります。
そんなタイミングで、金沢市は、
「五感にごちそう金沢宿泊キャンペーン」(以下「五感にごちそう」呼びます)を今回初めて企画。これは宿泊と市内の飲食店でのお食事などがセットになったプランです。あかつき屋もこのキャンペーンに参加し、金沢の旬彩料理の名店「あまつぼ本店」さんとの共同で、
秋冬限定のお得なコース料理プランをプロデュースしました。
海、山、里の様々な食材を見事な料理に仕上げた5つのコースは、どれも魅力的で、地元はじめ、遠来のお客様には、ぜひおススメしたいと思っています。
【魅力的な北陸・金沢の食材】
<日本海の幸>
(香箱ガニ)

(のどぐろ)

<加賀野菜>
(金時草)

(五郎島金時さつま芋)

(れんこん)

五感にごちそうは、現下のコロナ禍で低迷する観光産業の活性化策として企画されたものです。利用者は消費金額の段階別に一定額の補助が受けられます。
あかつき屋が、あまつぼさんとコラボした宿泊・お食事プランでは、Go toトラベルとの併用で、宿泊とお食事のセットプランが本来価格の半額以下になるという、この時期でしか実現し得ないような格安プランが誕生しました。
ところで、今回の五感にごちそうプロジェクトが金沢市から提案された時、パートナーとしてまず思い浮かんだのは、柿木畠のあまつぼさんでした。金沢おでんを含めて、和を基調とした多彩な料理がリーズナブルで楽しめることで、市民や観光客の評価が高いことや、兼六園、21世紀美術館など主な観光名所へのアクセスが抜群などが理由でした。
そして、今回数回にわたって打合せを重ねた社長の雨坪毅樹さんのお人柄やお仕事への姿勢に惚れたところが大きいです。
むろん利益を出さないといけなのですが、その中で、質の高いお料理をいかにリーズナブルな値段で提供するかに、随分と心を砕いていることが、分かりました。
(あまつぼ柿木畠本店)

あまつぼさんについては、私が20代の頃、そのお店が広坂界隈の旧石川県庁のそばにあった時に初めて訪れ、その後よく利用するようになったのですが、1980年代半ばに現在の柿木畠に移り、その後、業況を発展させているところは、栄枯盛衰の時代にあって、特筆すべきです。
お料理に見られる進取のスピリットと、清潔な店内やスタッフの方々の明るいおもてなしなどは、半世紀以上を経ても揺るぎないものがあります。
この機会に一度、あかつき屋ステイとともに、このコース料理を楽しまれては、いかがでしょうか。
天高く馬肥ゆる秋ならぬ、羊たちが、加賀・白山ろくの木滑地区ですくすくと育っています。耕作放棄地を利用した放牧地。子羊を中心とした10頭ほどが、秋晴れの下、草を食みながら、大きくなっていっています。
この羊たちをお世話しているのは、合同会社・
山立会の皆さんです。会社の代表は、有本勲さんです。有本さんは里山で様々なビジネスを起こし、ここが自立していける地域にと、精力的に活動をなさっています。私が参画する白山ろくぼたん鍋プロジェクトのメンバーでもあり、かねてからお付き合いがあります。
有本さんを中心とした仲間たちの挑戦。ぜひ成功してもらいたいと、陰ながら応援しています。
(放牧されている羊と有本さん)

木滑地区での羊の飼育は以前、県立大学と地元木滑集落の住民らでつくった協議会が行っていたもので、今春、その事業を山立会が引き継ぎました。将来的には、ここで育てた羊の肉(ラム肉)の生産と販売を目指しています。
山立会ではこの事業の立ち上げに当たって、クラウドファンディングを利用して資金を募集、あかつき屋では、多少ですが、協力させてもらいました。
有本さんは京都府出身で、進学した東京農工大学時代、9年間にわたりツキノワグマの生態を研究し、農学博士の称号を取得されています。羊の飼育については、そんなに詳しくなかったと思いますが、果敢に新分野に挑戦し、単なる飼育にとどまらず、商品開発や流通をも包含したビジネスとして軌道に乗せようとしている姿は、まさにフロンティアです。
(山立会から届いたナメコ)

先日、こちらにナメコの詰め合わせパックが届きました。クラウドファンディングの返礼品です。
山立会が木滑地区の生産工場で栽培したナメコで、それら特大サイズのナメコ(でけえなめこ)と普通サイズのナメコは、おみそ汁や、鍋料理にして、おいしくいただきました。
コロナでどこか憂鬱な空気が漂っている中で、有本さんらの取り組みは、一服の清涼剤で、周りに元気を与えてくれます。
メンバーの皆さん、体に気をつけて、頑張って下さい。また、遊びに行きます!
10月、秋が佳境へと時を進める中で、国登録有形文化財の金沢町家あかつき屋のお座敷に、素晴らしい一帖の屏風が加わりました。表面には、中国東晋時代の詩人陶淵明の『四時(しいじ)の詩』(四時とは四季の事)の句が毛筆で書かれています。これは、今夏に94歳で人生を全うした叔母がしたためたものです。
四季の美しい情景を描いた句の作品は、叔母の凛とした、しっかりとした筆遣いにより、際立った存在感をもっています。訪れるお客様はその書作品を味わうとともに、その背後に広がるお庭にも目をやり、金沢町家での秋の時間を楽しまれています。
(氷見の叔母の書作品が掲示された屏風)

叔母は富山県氷見市で生まれ育ちました。人生の半ばからは仕事の傍ら書道に励み、数多くの秀作を遺しました。その一つは、掛け軸の作品として、これまで折にふれて、あかつき屋で掲げてきました。
最晩年は、高齢もあって福祉施設で余生を過ごしました。
今回の屏風の作品は先日、四十九日の忌明けに、叔母の家から贈られたものです。
春水満四澤(しゅんすいしたくにみつ)
夏雲多奇峰(かうんきほうおおし)
秋月揚明輝(しゅうげつめいきをあげ)
冬嶺秀狐松(とうれいこしょうをひいず)
ある文献によると、陶淵明のこの作品は、次のように解釈されるようです。
春は水が 四方の沢に満ちる
夏は入道雲が 素晴らしい峰を形づくる
秋は月が 明るく輝いて 天にかかり
冬は嶺に 一本の松の緑が秀でて美しい
(屏風は背後のお庭と一体となり、絶佳の風景を見せてくれます)

この書作品は、文字で成り立っていますが、これに見入っていると、四季折々の美しい風景が目に浮かぶようです。
屏風の後方には、あかつき屋のお庭が広がっています。書作品と渾然一体となって、和を極める景観が現出されています。
お客様は、書に感嘆しながら、「時間が止まったように感じる」などと感想を語られていました。
叔母さん、ありがとうございました。安らかにお眠り下さい。
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