降雪に備えて、あかつき屋の庭の松の木に、雪の重みから枝を守る雪つりを施しました。支柱のてっぺんから枝々に張られた縄で形作られた三角錐は、青空に鮮やかに映え、胸のすく思いで眺めました。
(お庭の松の木に施した雪つり)

今年の雪つりは、昨年担当したスタッフのSさんが、若干体調を崩されたので、知り合いの植木屋Kさんにお願いしました。
(支柱の下部に敷かれた縄で作った“座布団”)

Kさんは松の木の中ほどの枝に支柱を立て、その最上部から幾本もの縄を下におろし、上手に枝に結んでいきました。Kさんは、さすがプロの技と言えるような工夫も見せて下さいました。支柱の重みで枝を傷めないように、その下部に縄で編んだ“座布団”を敷いたのでした。
Kさんは「こうすれば、立派な枝が傷つかないだけでなく、支柱もしっかり固定されるんやわ」とおっしゃいました。
なるほどと感心しつつ、そのかわいらしい座布団は、どこかユーモラスでした。
(あかつき屋の外側からの雪つりの眺め)

あかつき屋の外側からも、その雪つりを見てみました。その光景は、町家にしっくりとなじんでいます。その端麗さは、雪が降らなくても十分いけるんじゃないかと思いました。
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今朝、お客様ととても印象深い形でお別れをしました。山形県から来られた山形大学医学部のテニス部の皆様、あかつき屋での最後の記念撮影では、全員があるポーズをつくられました。それは、「能登半島」の形でした。体を左に傾けながら、挙げた腕をひじのところでやや折って、声を合わせました。「能登半島!」っと。
(記念撮影で「能登半島」のポーズをとられる山形大学の学生さん=写真掲載了解済)

山形大からのお客様10人は前日から、あかつき屋に全室貸切で一泊されました。山形から車3台で来られ、昨日は昼頃金沢に着き、近江町市場で昼食を取られたあと、能登・羽咋の千里浜なぎさドライブウエーに向かわれました。
千里浜は高潮のため、砂浜をドライブできなかったそうですが、素晴らしい夕日を見ることができたそうです。それが心に残ったようで、あかつき屋を出発する前の最後のポーズが「能登半島」になったようでした。
「うまいポーズだなぁ」。私は感心しながら、カメラのシャッターを切りました。その後これから21世紀美術館や、ひがし茶屋街へと向かわれる若者たちをお見送りしました。
お見送りした後、昨夜、お客様たちは片町のおでん屋さんで食事を取ってお宿に帰った後、皆で掘りごたつに入って、楽しく二次会をされている姿を思い出しました。
「山形大の皆さん、無事帰られましたか? これからも、元気に頑張ってください。そして、またあかつき屋に遊びに来て下さいね」
あかつき屋で冬支度に当たった先の勤労感謝の日、まち中でも雪に備えた作業が見られました。あかつき屋からほど近い東兼六町では、町内の用水で融雪に使う吸水装置の設置作業が、近隣住民の手で行われていました。
近づく冬に備えて、町内の人たちが雪の不安を少なくしようと協力しておられる姿に、下町に今も息づく連帯感を見た思いがしました。
(融雪に使う吸水装置を用水に設置する住民の方々)

(用水に設置された吸水装置)

この光景とは、あかつき屋にお泊まりになったお客様を兼六園にまでご案内した帰り道に出会いました。
八坂を過ぎて右折したすぐの道で男性10人ほどが、声をかけあいながら何やら作業をしておられます。この道は、頻繁に通りますが、こんなに多くの人を見るのは、実は初めてでした。
用水に近づくと、男性数人が、何か機械らしきものを設置しています。聞けば、融雪に使う水を汲み上げる装置でした。ここで水をポンプアップして、側溝脇に設置されているパイプにまで水を送り、散水する仕組みになっていました。
用水に設置した吸水装置は、ポリバケツの蓋も使ってあるので、住民で手作りしたものかとお尋ねしたところ、装置を固定する木枠は、手作り品だそうですが、本体は、業者の手を借りて作ったものでした。
吸水装置を用水底に固定した後、早速試運転をしたところ、融雪パイプから無事水が散水されたようでした。作業に当たった男性たちは、これを確認すると、表情には安堵感が漂よっていました。
私は、いつもお客様をこの道を通って兼六園にまでご案内しているので、御礼の気持ちもあって、町内の方々にごあいさつしました。これから雪を踏みしめてこの道を歩くときは、この日のことを思い出すことでしょう。
ここ数日、肌寒い日が続き、さすがに冬が近づいていることを感じずにはおれません。それに合わせて、あかつき屋では、冬支度を着々と進めています。
玄関横上がりの間には、趣のある行灯を置き、コミュニティ・ルームの掘りごたつには、こたつ布団や上掛けをかけ、電気こたつとしての準備を整えました。古いこの町家も北国の冬を迎えますが、お客様には身も心も暖かくして過ごして頂きたいとの願いからです。
冬支度を終えた今、今冬も和やかな団らんが繰り広げられることを思い描いています。
(手漉き和紙で作られた行灯)

上がりの間に置いた行灯(灯り)は、和風照明工芸作家千綾真由美さん(金沢市在住)の最新作です。「凛として」と題した作品は、三角の黒い木枠で八面体を作り、これを上下に組み合わせています。木枠の空間に白山ろく吉野谷産など5種類の手漉き和紙を貼り付けています。そのうち3面には、富山県内の女流書家の手による書が付けられています。
白と黒の2色で作られた行灯からもれる光は、和紙の風合いとあいまって、深く静かな雰囲気を醸しだしています。特に、夜が長くなってきた最近では、このような行灯のもつ役割、力は大きく、お客様は「灯りを見ているだけで、時がたつのも忘れ、いやされる気がします」とおっしゃいます。
また、三角という鋭角的なラインが、硬質なイメージをつくり、千綾さんの意図する「凛とした」空気をつくっているように感じます。
この灯りがこの冬、お宿内での語らいをそばで静かに見守ってくれます。
(大きな掘りごたつには、こたつ布団を掛け、電気こたつとしての準備を整えました)

このほか、コミュニティ・ルームでは、8人は入れる大きな掘りごたつに、こたつ布団と上掛けをかけました。今年もお客様たちが、こたつにあたりながら、気のおけないおしゃべりを繰り広げてくれそうです。
(格子戸を守る雪囲い=左 葉ボタン=右)

今日は朝から快晴に恵まれたので、外回りの作業も進めました。一階格子戸の外側には、雪囲いを取り付け、玄関前には、葉ボタンを飾りました。
冬は、冬なりのしつらえをするのも、また楽しいものだと思います。
卯辰山の寺院群は、人々の心のよりどころになっているばかりでなく、中には金沢の重要な歴史を刻むお寺もあるのですね。今回の寺院探訪のガイドを務めて下さったKさんは、加賀友禅ゆかりのお寺・龍国寺や金沢の茶道愛好者には、なじみが深い月心寺をも案内して下さいました。
(紅葉に包まれた龍国寺)

龍国寺は曹洞宗のお寺で、本殿は、いくつもの赤い鳥居が続く階段を登った先にありました。ここも紅葉に彩られていましたが、訪れる人は少ないようで、深閑とした雰囲気が漂っていました。
(宮崎友禅斎にちなんだ碑=上や鳥居=下)


Kさんは、説明して下さいました。このお寺には、加賀友禅の祖といわれる宮崎友禅斎の碑やお墓があり、金沢の伝統工芸には、とてもご縁の深いところ。お茶室もあり、毎年5月17日には、友禅忌として祭典が行われているそうです。
入り口の鳥居にも、加賀友禅の業界団体が奉納したことが記されており、このお寺が友禅関係者の崇敬を集めていることが、よく分かります。
(月心寺境内)

(月心寺のお庭。奥には仙叟宗室のお墓があります)

龍国寺の階段を下りて、いくつかのお寺をめぐった後、曹洞宗の月心寺を訪れました。ここには、金沢の茶道の祖と言われる仙叟宗室のお墓があります。これにちなんで、毎月23日には、茶会が開かれているとのこと。
年輪を刻んだ門や本殿、手入れが行き届いたお庭を間近にすると、そのお茶会は、さぞ心落ち着くものだろうと想像しました。
金沢市内で紅葉スポットはどこかと聞かれたら、どう答えるでしょうか。実は数日前、あかつき屋のお客様から、そんな問い合わせを受けたのです。その時は、兼六園などいくつかの紅葉スポットをお伝えしたのですが、今は、自信をもって言えます。卯辰山寺院群の紅葉は、秀逸であると。
今回の卯辰山寺院群探訪を通じて、それを強く実感しました。心に残ったお寺のうち、西養寺と来教寺について記します。
(紅葉が見事な西養寺の境内)

西養寺は天台宗のお寺で、石段を上っていった高台にあります。境内に入ると、まずその彩り豊かな紅葉に圧倒されます。楓、イチョウ等々、様々な木々が色づき、秋色の饗宴といった風情です。
イチョウの木の下の地面には、イチョウの葉とともに数多くのギンナンが落ちていました。
(イチョウの木の下では、数えられないほどの葉と実が落ちていました)

ふだんは観光客どころか、市民も訪れる人が少ないのか、人が足を踏み入れたような空気感は乏しく、さらに、ことさらな整備や演出がない分、自然体のお寺のように感じました。
(山門からの見事な眺め)

また、山門からの眼下の眺めも素晴らしいものがあります。瓦屋根の家々とともに、遠方には高いビルが林立し、新旧が交錯する街並みといった趣。でも、不思議と違和感がありません。
(様々な色を見せるお庭の木々=来教寺)

(人相おみくじのコーナーも)

西養寺の西側ほど近くにある来教寺は、西養寺と同様、天台宗のお寺。ここも境内に入ると、今が紅葉のピークとばかりに、様々な色が躍っていました。
このお寺には、学業向上、開運出世などに御利益がある六地蔵菩薩があります。さらにユニークなのは、人相おみくじを行っている点。
このように、お寺をひとくくりにできないところが、卯辰山寺院群の幅広さ、おもしろさと言えそうです。
あかつき屋で女子会をされたお客様グループをお送りした後の今日午前10時から、グループで卯辰山寺院群を探訪しました。紅葉に彩られた寺院はどこも美しく、感動のため息の連続。その中で、日蓮宗のお寺・全性寺(ぜんしょうじ)の前に来ると、何やら華やいだ雰囲気が。なんと、このお寺の跡取りさんの結婚式が行われようとしているのでした。
(紅葉が美しい全性寺境内)

私の友人で、金沢の観光ボランティアガイドまいどさんをされているKさんのご案内で、グループは、卯辰山寺院群をめぐりました。雨模様の一日でしたが、散策する時間帯に限って雨は上がり、メンバーは「日頃の行いがいいからかね~」などと気を良くしながら個々の寺を訪ねました。
(結婚式に臨むため、お寺山門へ向かう花嫁さん=写真掲載了解済)

(花嫁さんを迎える花婿の副住職さん=同)

11時頃、全性寺さんに近づくと人が集っており、慌ただしい動きが。何だろうと思っていたら、今からこのお寺の結婚式が行われようとしているのでした。
ちょうど空は晴れており、この時を見計らって、花嫁さんがお手引きの女性に伴われて、お寺に入るセレモニーが今まさに行われようとしているのでした。
お寺の山門の前では、この寺の副住職さんが、花嫁さんが来るのを待ちかまえていました。花嫁さんは、しずしずと歩きながら、でも笑顔を浮かべて新郎の副住職さんのところへ近づいていきました。
副住職さんは、りりしく立っておられましたが、喜びを隠しきれないようにも見えました。
私たちは最初、雨を心配した卯辰山寺院群探訪だったにもかかわらず、その天候の心配は消えたばかりか、こんなおめでたい場面にも出くわし、「なんと幸運なこと」と、一同の気持ちは、ぱーっと明るくなりました。
その上、思いがけないプレゼントまで頂きました。このお寺近くにいた人たち一人ひとりに、お寺から紅白のおまんじゅうが手渡されたのです。
「通りすがりの者にまで、なんと気の毒な…」。私たちは、恐縮するばかりでした。
(お寺山門に掛けられた健康健脚祈願の大きなわらじ)

ところで、この全性寺さんは1522年に創建の古刹で、1786年に高岡市から現在地に移ったそうです。紅殻塗りの山門が特長で、門には大小様々なわらじが掛けられています。門信徒らが、健康や健脚を願って奉納したものだそうです。
最近お休みしていますが、マラソンを愛好する者としては、機会を改めて願掛けにお参りしようと思ったことでした。
多少の雨のぱらつきがあったものの、ここ数日、金沢市内は好天に恵まれました。冬が近いとはいえ、そんなに寒くはありません。
あかつき屋にお泊りになったお客様は、そんなお天気に誘われて街へ繰り出し、晩秋の表情を写真に納めてこられました。愛知県からお越しになったYさんが撮ったナイスショットをご紹介させて頂きます。
(お客様が撮られた21世紀美術館周辺の紅葉と青空=写真掲載了解済)

Yさんは16日からあかつき屋に一泊されました。今日の夜、金沢で撮影された写真の中から精選されたものをご自宅からメール添付で送って下さいました。
市内をレンタサイクルで回られましたが、このうち21世紀美術館や兼六園で撮影されたものをご披露させて頂きます。
(21世紀美術館や兼六園でのスナップ写真=同)


21世紀美術館は、建物の外も散策するのにぴったり。そこでは空の青と紅葉が、見事なコントラストを描いていました。視線を下の方に落とすと、木の実が日射しを受けて、輝いていました。
兼六園は、ほぼ雪吊りを終え、落ち着いた佇まいを見せていました。
兼六園がライトアップ 神々しい風景私も今夜、兼六園がライトアップの日に当たり無料開放だったので、お客様のグループとともに、歩いて公園へ出かけました。
枝ぶりが立派な唐崎松などは、光に照らされ、神々しいほど。観光客も多く、一帯は熱気すら感じました。
次第に寒くなってくると、あったかいものが恋しくなります。そんな時に頼りになるお店が、あかつき屋から歩いて行ける「まるよし」さん。ここは、創業58年になる老舗のおでん屋さん。何とここは、お寿司も食べられるのが特長で、うちのお客さんもちょくちょくお世話になっています。
(「まるよし」さんのご主人。とても気さくな方です)

まるよしさんの現在のご主人は二代目で、そのお父さんが昭和28年に開店したそうです。昭和36年からは、にぎり寿司も出すようになったそうで、店内には、寿司ネタを入れるガラスケースもあります。
(おでんには、カニメン=お皿左、バイ貝=同奥、もあります。)

金沢のおでんは、ちょっとしたブームになっているようで、あかつき屋ではお客さんからよく「金沢おでん」を食べられるお店はないかと、聞かれます。
そんなお客さんのニーズに応えるように、まるよしさんのおでんのネタには、大根、フキ、豆腐、さつま揚げ、牛スジなどの定番品のほかに、金沢独特の香箱ガニを使ったカニメンやバイ貝なども入っています。
そしてここのお店の魅力は、割安のお値段もさることながら、何といっても庶民的で気さくな雰囲気。ご主人、女将さんとの楽しい会話で、時間はあっという間にたってしまいます。
うちのお客さんが以前、まるよしさんに食べに出かけたのですが、3時間ほどたっても帰ってきません。事故にでもあったのかしらと心配したほどで、日付が変わる頃にようやく戻って来られました。
お客さんは「お店のご主人とのおしゃべりが楽しくて。最高の夜でした」と、とても満足されていました。
お客様をお送りした後の昼過ぎ、妻とともにあかつき屋から歩いて県立美術館を訪れました。見学後、その裏手にある小道を散策しました。木々はさらに紅葉の度合いを進め、色鮮やか。雨上がりだけに、一帯は、ひんやりとした空気が満ちる中、葉のざわめきや水の音を耳にしながら、ひとときを過ごしました。
(県立美術館裏の小道。木々の紅葉が美しい)


県立美術館では、北國水墨画展が開催されており、それに父が近作を出品しているので、鑑賞で訪れたものです。見学後、美術館の喫茶店でお茶しようとしていたのですが、満席のためかなわず、ふらりと裏手に出ました。
そこには、崖に沿って小道が整備されていました。適度にカーブしているので、景観としてよいばかりか、歩いていてもどこか心弾む感じ。晩秋の木々の色合いの妙を楽しみながら、気ままに歩きました。
(繁みの間から21世紀美術館=手前と市役所=奥が見えます)

途中、繁みが切れたところがあり、そこから下界が望めます。下はどこだろう。見下ろすと、金沢21世紀美術館と市役所が正面にあるのでした。緑の小窓から、アートのトレンドの最先端をゆく21世紀美術館と金沢市の行政の中心が見えるわけで、金沢の中心部を象徴する風景のように映りました。
(本多町へと下りる階段。傍らでは、滝が水しぶきを上げて流れています)

小道から、本多町方向へ下りる階段があります。市中村記念美術館へと通じる道です。傍らには、滝が流れています。雨の後とあって、ふだんより水かさが多いようです。
周囲がとても静かなだけに、滝の水音は、荒々しくさえありました。
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