あかつき屋の前で出くわした近所のKさんが、乗っていた自転車を止め「ムクドリがいるんですけど」とおっしゃいます。何のことか分からず、Kさんの家まで行ってみると、籠に入ったムクドリがいます。
どうしたのかと思ったら、隣のお寺・広済寺さんのお庭の木の巣から道に落ちたのを保護しているのだというんです。ムクドリは、そんな風もなく、元気そうに籠の中にいます。

Kさんによると、ムクドリは先週末の25日に、巣から道に落ち、それをあかつき屋のお隣のSさんの奥さんが見つけ保護し、それをKさんが託されて巣箱に飼っているようです。
ムクドリは幼鳥で、発見された時は、けがをしていたらしく飛べず、ちょっと弱っていたようです。
しかし、Kさんのお世話のかいあって、今は飛べないまでも元気そうです。
あかつき屋の界隈は、兼六園・金沢城公園に近いのに加え、静かで、お庭をもっている家が多いせいか、結構いろいろな鳥がやってきます。
ムクドリもその一つと言え、今、Kさんとその3人の子どもさんらにお世話されています。
早くもとの姿になって、自然に帰る日を願っています。
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あかつき屋からサンダル履きで行けるほど近くにある和菓子屋と言えば、「山本観音堂」(以下・観音堂)さん。
そのお店の前に氷室まんじゅうの旗が立てられていました。
「いよいよそんな時期か」。お店では、金沢の夏の食の風習である氷室まんじゅう作りが最盛期を迎えており、仕事場でその様子を見せて頂きました。

氷室とは金沢では、冬に降った雪を夏まで持たすため保存しておく場所のこと。藩政時代、旧暦の6月1日に氷室の雪を将軍に献上するため、江戸まで届けたという歴史があります。
それにちなんで、無事夏を乗り切れるよう無病息災を祈願する意味あいで、この時期に酒まんじゅうの氷室まんじゅうを作り、食べる習わしになったようです。
観音堂さんは、6月末は、正月前の12月と並んで最も忙しくなる時期だそうです。
売り場すぐ後ろの仕事場では、香ばしいにおいがたちこめており、御主人と女将さんが、かいがいしく手を動かしていました。
まんじゅうの皮の生地には、お酒の風味をだすために、酒の原形といえる、どぶろく(濁り酒)を練り込みます。氷室まんじゅう作りに、どぶろくを使っているのは、金沢でも数軒しかないのではとのことで、実際に甕(かめ)に入ったどぶろくを見せてもらいました。その素朴さを通り越して、原初的な雰囲気に思わず声を上げてしまいました。
(どぶろく)

(ほいろと呼ばれる発酵器)

(ほいろを暖める、練炭こんろ)

出来上がった生地には、黒あんを包み、これを発酵させます。その発酵させる道具が、引き出しがいくつもある木箱です。「(木箱は)漢字でどう書くかわからんけど、『ほいろ』と言うんやは」(御主人)。
その年季の入った、ほいろを下から暖めるのが、練炭こんろです。能登(たぶん珠洲)産の珪藻土製の例のやつです。
練炭こんろを使うのは、「ガスの火だと強すぎ、練炭だと火力が安定し、ちょうどいいんです」と、御主人は言います。
(せいろで蒸された氷室まんじゅう)

ほいろで発酵させたおまんじゅうは、今度は、せいろに入れて蒸します。おもちを作るのと同じ要領です。
私がお邪魔した時は、蒸し上がったばかりで、女将さんは、せいろから白、うす緑、薄い赤の三色のおまんじゅうを手際よく長四角の器に移していました。
(出来上がった氷室まんじゅう)

「ちょっと熱いけど、出来たての(氷室)おまんじゅうを食べませんか」と女将さん。
「えっ。いいんですか」。私はお言葉に甘えて、1個頂きました。
口の中で、ほわーっと広がる甘みと食べ応え。梅雨の不快感を一気に吹き飛ばしてくれました。
日ごとに暑くなる中、あかつき屋では、夏用ののれんを新調しました。
麻を素材にブルーに染め上げたもので、風にひらめくと涼しげ。いっとき蒸し暑さを忘れさせてくれます。
また、Tシャツも作りました。これは、友人のYさんが、特別に作ってくださったあかつき屋のロゴマークをシャツにプリントしたもので、親しみのもてるデザインです。
今後、これを着て毎日がんばっていきます。
(新調した麻製ののれん)

のれんの題字は、書道をたしなむ妻の手によるもの。この文字が、ブルーの生地にのると、また別の趣が生まれ、こげ茶を基調とした背後のあかつき屋の建物に映えるようです。
こののれんは今回も、「奥田染色」さん(金沢市専光町)に製作をお願いし、担当の女性社員さんに完成品を届けて頂きました。
(あかつき屋の篆刻デザインが入ったTシャツ)

Tシャツも奥田染色さんに作ってもらったのですが、背中のあかつき屋のデザインは、篆刻の腕がある友人のYさんがボランティアでデザインして下さいました。
おうちのマークの中に、あかつき屋の文字を配したもので、ほのぼのとした味わいがあります。
町家に、どこか雰囲気が合っていると思います。
長野県松代で7月3日から「
第10回まつしろ現代美術フェスティバル」(まつしろ美術フェス)が開幕するそうです。
作品展示あり、アートパフォーマンスあり、現代舞踏ありと、かなり多彩な内容です。実は、このほどあかつき屋にお泊りになったお客様からもたらされた情報です。
このお宿を舞台に様々な出会いがあるのですが、今回は、現代アートへの誘(いざな)いです。
(第10回まつしろ現代美術フェスティバルのチラシ)

この情報を持って来られたお客様は、長野市内でデザイン事務所「マンズ デザイン」を経営する太田伸幸さんです。
太田さんは、まつしろ美術フェスの広告宣伝部門を担当しておられ、今回自作のチラシを持参し、あかつき屋に宿泊されました。
石川県入りは、視察兼観光(その逆かも)の旅のようでした。
(まつしろ美術フェスの宣伝を担当する太田さん=写真掲載了解済み)

チラシによると、まつしろ美術フェスは、松代の地から、メッセージを世界に発信しようという狙いがあり、日本のほか、韓国、タイ、チェコなどのアーティストが参加するそう。
7月3日から7月18日までの会期中、主に週末を中心にイベントが開催されます。作品展示のほか、茶会、コンテンポラリーダンスなどもあり、刺激的な内容です。
地元金沢では、21世紀美術館が創造的な芸術活動を行っており、昨年は瀬戸内海の島々で瀬戸内国際芸術祭が開かれました。
信州・松代でも気鋭のアーティストとそれを支えるボランティアらによって、現代美術の祭典が開かれるとのこと。
日本は、東日本大震災によって苦難の中にありますが、明日をひらこうというチャレンジ精神が旺盛な作家や若者らが、各地にいるんですね。
この度、仕事の合間を縫い一泊二日で東京へ行ってきました。
主な目的は、ゲストハウスの勉強で、ゲストハウスとしては大先輩の「
サクラホテル神保町」さんに泊まりました。いくつか収穫があったことに加え、久しぶりに東京の空気を吸って気分も一新、リフレッシュした気持ちでお宿業に励んでいます。
(サクラホテル神保町)

サクラホテルさんを自らの研修先に選んだのは、東京で働く息子の勧めがあったから。このホテルは、一階にカフェがあるのですが、そこで息子が以前にお茶を飲んだことがあり、「なかなかいいゲストハウスだ」と紹介してくれたんです。
このホテルは、安価で泊まれる、外国人旅行者を対象としたお宿としては、日本でも先駆的な存在のようで、スタッフの応対や掲示物などに伝統を感じました。
ただ、さすがに今回の大震災の影響からは逃れがたく、震災後外国人旅行者は激減したとか。
それでも、朝一階カフェで落ち着いた表情で朝食をとる外国人カップルらの姿を見ると、外国人らには居心地の良いお宿として親しまれているんだなと感じました。
あかつき屋も、いい意味で、そつがなく、安定した心のこもったおもてなしができるよう、さらに精進しようと心に誓いました。
(皇居のお堀)

(梅林坂の梅)

このホテルからは、皇居が近いので、チェックアウト後、歩いてそこへ向かいました。
雨に濡れた後とあって、皇居の緑はしっとりとした色合いを見せており、一帯は都心と思えない静けさがありました。
梅林坂の梅の木は、熟れた実をつけており、ひしめきあう実は、重たげでもありました。
(お堀の周りを走る皇居ランナーたち)

お堀の周りは、うわさの皇居ランナーたちが、黙々と走っていました。マラソンを愛好する身としては、少なからず刺激を受けたことでした。
ゲストハウスを営むこの町家に今、珍しいものが育っています。枝豆(写真左)とゴーヤ(同右)です。
この二つの“野菜”は、お庭の片隅で木箱に植えられているのですが、見るからに健康そうに背丈を伸ばしています。

これは、あかつき屋のスタッフであるサカイさんが、持ってきてくださったものです。
サカイさんは、お庭の維持・管理のほかに、植物や野菜の栽培もプロで、他の地域で住民の指導にも当たっておられます。
今回は、そうした活動の一端を紹介したいと、今月初め手作り木箱に植えられた枝豆とゴーヤの苗をあかつき屋に持って来られました。
このミニ野菜セット、題して「あいちゃんちの野菜畑」。畑のないご家庭でも、菜園をもっている感覚で園芸作物を育てる楽しみを味わってもらおうという狙いから作られたものです。
サカイさんは、この野菜畑を販売もしています。
なお、町家に畑というのも、ちょっとというところがあるので、しばらくしたら場所を変えて育てようかなとも考えています。
金沢の中心部にありながら、穴場的スポットと言えるのが、白鳥路。金沢城のふもとにあって、兼六園下から大手町方面へと抜ける木立ちの道。
そこに蛍が出始めました。今日の夜、訪れた時は枕草子ならぬ「蛍が一つ、二つなど、ほのかにうち光る」といった風情でしたが、お客様が来られる週末には「蛍の多く飛びちがいたる」といった様を見せてくれればいいな、と思いました。
(清らかな水辺がある白鳥路)

白鳥路は、観光スポットが多い金沢のなかで、私にはトップクラスのお気に入りのスポット。数100㍍の緑がうっそうとした小道は、静かで、ひっそり感も漂います。
そこは、都心にありながら、金沢でも知る人ぞ知る、蛍が数多く舞う場所。週末の17日から3日間は、午後8時から金沢市主催で「白鳥路 ホタル観賞の夕べ」が開かれます。
現在は、蛍の数はまばらですが、週末には数多く舞ってくれるのではないかと期待しています。
(アジサイは今が見頃に)


それとは別に、その小道は今、アジサイが見頃を迎えています。
梅雨空が続く中、水辺に花を並べる姿は、気持ちを明るくさせてくれます。
梅雨を思わせるような蒸し暑い日が続く中、あかつき屋では金魚を飼い始めました。
3匹の金魚は、金魚鉢の中でのんびりと泳いでおり、心がなごみます。

金魚の飼育は、夏を少しでも涼しくとの思いから。
金魚3匹は、町の金魚屋さんで購入し、金魚鉢は、杜の里のホームセンターで買いました。
厚い雲におおわれ、むしむしとした一日になった今日、玄関すぐの上がりの間の小机に金魚鉢を置きました。
金魚は、外気の蒸し暑さもそ知らぬ表情で、ゆうゆうと泳いでおり、どこか涼しげ。
これからは、金魚3匹も一緒にお客様をお迎えします。
あかつき屋では、上がりの間を中心に夏へ衣替えをしました。
アジサイなどを描いた色紙を衝立に飾り、部屋は涼しげな雰囲気が漂っています。
(上がりの間の飾り付け)

上がりの間では、これまで武者人形を飾っていましたが、6月に入り、飾り付けを一新しました。
衝立には、水墨画をたしなむ父の手による、アジサイと鯉の絵の色紙をそれぞれ掛けました。
父は社会の第一線を退いた後、水墨画を習い始め、今は生きがいといってもいいほど良い趣味になっています。
80代半ばの高齢ですが、作風は若々しいところがあり、精神は簡単に老いないのだなと思います。
(2階あかつきの間の「アサガオ」の色紙)

2階10畳の「あかつきの間」では、父がアサガオを描いた色紙作品を床の間に据えました。
絵心の血は私は受け継いでおらず、私は、もっぱら見て楽しんでいます。
夕方チェックインされるお客様をお迎えする準備に町家の中を動き回っている時、玄関から「畳屋でーす」と女の人の声がしました。
出てみると、倉西畳店(金沢市菊川1丁目)の奥様でした。ご主人と来られたのです。奥様とは、この町家のリニューアルで
昨年12月に新調した畳を搬入されて以来ですので、半年ぶりの再会です。
お二人は、手に珍しいものを持って来られました。畳で作った石川県の模型です。あかつき屋にプレゼントしてくれるというのです。「うわー。これはいい」。思わず声が出ました。
(畳でできた石川県の模型)

倉西畳店さんには、この町家の古くなった畳を表替えするなどして、新しくしてもらいました。その畳は、半年たった今も、新調した畳独特のにおいが、ほのかにしています。そんなにおいをかいでいるだけで、いい気持ちになります。
ご夫妻は、あかつき屋がオープンしてからは初めて中に入るので、一通り部屋をご案内しました。
そして掘りごたつのあるコミュニティ・ルームで、ご主人は石川県をかたどった手作り畳を披露されました。
ご夫妻には、小学3年生を筆頭に3人のお子さんがいらっしゃるので、子育てには関心が高いようです。
ご主人は先日、畳を土台にした交通信号ボードを作られており、今回は、新たに石川県の模型を畳を作る要領で製作されました。中は、型崩れしないように木屑を入れたそうですが、表面はイ草でできた畳表を張り、周囲は縁(へり)で閉じています。
これは学校の社会科教材にもなりそうですが、「(観光の)お客様に喜んでもらえれば」(ご主人)と、あえてあかつき屋に下さったのでした。
この石川県模型は、能登島まで付けてある手の込んだもの。見た目がユニークな上に、肌触りが畳そのものなので、どこか安心感があります。貴重な品ですので、玄関横の上がりの間に展示させて頂きます。
(イ草をふんだんに使った合掌造り家屋)

ご夫妻は、加えてイ草をふんだんに使った合掌造り家屋をもお持ち下さいました。これは、もらい物だそうですが、町家の素朴な雰囲気にとても合っています。
いろんな人が、ゲストハウスを営むこの町家に愛情を寄せて下さり、感謝、感謝です。
お泊りのお客様には、そんな方々の思いにもふれて頂けたらと願っています。
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