猛暑が続く毎日であるけれど、とにかく9月入り。夏休みの繁忙期をしのぎ、私たちには安ど感も。所用に加え、気分転換もしたいと、昼頃、車で隣県富山の南砺市に入りました。
城端地区での用事を済ませ夕暮れ近く、福光地内の山里の道を走っていたところ、思いがけない風景と出会いました。
整然とした稲田が、黄金色に輝き、まぶしく視界に入ってきたのでした。明日か、あさってにも刈り取られるのではないかと思われるほどに、成熟した実り具合です。
(刈り取り前の稲田が広がる見事な風景=南砺・福光地内)

その一方で、まだそこまでには至らない、緑がやや強めの田も広がっていました。生育の進度の多少の違いが、こうした風景をつくっているようです。
それがかえって、この穏やかな里山の景観にメリハリを与えています。
そして、家々が点在する集落と、さらにその背後に連なる医王山系の山並み。それは図らずも、見事な一幅の絵画のよう。
蒸し暑かろうが、時に強い雨に打たれようが、弛まず続けられる耕作の営み。始まった里の秋の恵みを感じながら、帰路の金沢へと車を走らせたのでした。
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(前回のつづき)
一度は訪ねてみたかった町、そこは高岡・金屋町です。高岡鋳物発祥の地とされ、通りには歴史的建造物群が連なり、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
今回の高岡視察ツアーでは、金沢の三茶屋街とも比較しながら、街を歩きました。いまだに職人の息遣いを感じることができ、高岡の伝統産業である鋳物製品を一層身近に感じることができました。
(歴史的な佇まいの金屋町の通り)

この町は、藩政時代に前田利長公が、産業振興のために外部から鋳物師を呼び寄せ、住まわせたのが始まりです。ざっと400年の歴史があり、通りには千本格子と石畳が整えられ、その景観は美しく、重厚です。
ガイドさんの説明を聞きながら街歩き。通りには、今も鋳物の生産に従事する工房兼住宅が何軒もあり、さながら生きたミュージアムと言った趣。今も鋳物を生業とする家では、製造に従事する様子を見せて下さり、現在では希少となった職住一体の町を実感。
(鋳物職人さんの工房を見学)

(鋳物資料館も訪ねました)

通りには、高岡市鋳物資料館がありました。そこは、高岡鋳物の歴史を伝える古文書や鋳造技術を知ることができる鋳物製品や鋳造道具などが数多く展示されています。
鍋釜や鍬などは、子どもの頃から馴染んできましたが、この資料館を通じて、それらを生産する現場は長年、まさに暮らしを支える基盤となってきたのであると思いました。
同じ歴史的な通りでも金沢の茶屋街は芸妓さんが主役の伝統芸能を継承してきた町。一方、金屋町は、ものづくりや暮らしを支えてきた町。性格は異なりますが、ともに北陸の魅力を構成する重要な要素になっていると感じました。
金沢に長年住んでいて、北陸には機会を見つけてあちこち訪ねている私どもですが、それでも意外と不案内のところがあります。その一つがお隣・富山県高岡です。金沢からは車で一時間もかからないところですが、重厚な趣の寺院や城跡などが数多くあり、独特の存在感を備えています。
先に行われた金沢市観光協会の高岡視察ツアーでは、そんな歴史資産をいくつか訪ねました。寺院では、浄土真宗の勝興寺と曹洞宗の瑞龍寺です。広大な敷地に凛としてたたずむその姿には、身を正される思いがしました。
(国重要文化財・勝興寺を訪問)

(本堂でガイドさんの説明を聞く)

勝興寺は国指定重要文化財で、港町伏木の高台に立地します。初めて訪れました。現在地に420年ほど前の戦国時代に創建されたそうで、その門構えなどから城のようとも称されています。
令和2年11月に23年に及ぶ大規模な保存修理工事が完了したそうで、建物の随所に修復を終えた後の真新しさを感じました。
流ちょうなガイドさんの案内で、あちこちを歩いて見て回りました。境内には、いくつかの門や蔵など計12棟が国指定重要文化財となっており、ただただ圧倒されるばかり。北陸の地で、新たな宝物を見つけた気持ちがしました。
(整然とした佇まいの瑞龍寺)

(住職さんの名調子なご説明)

高岡駅からほど近い瑞龍寺は国宝指定。私にとっては2度目の訪問です。
いつ見ても心が洗われるような、整然と配置された建造物群。ここは藩政時代に高岡の町を開いた加賀前田家の二代当主前田利長の菩提寺になっています。
特に仏殿は最高傑作の誉れが高く、造る人の建築技術と精神性の高さを誰もが感じることでしょう。この風景を見るだけでも高岡を訪れる価値があると感じます。それにしても、ツアー一行をご案内して下さったご住職さんの語り口は、聞く人をけっして飽きさせない名調子。ユーモアも交え、往時のエピソードを眼前に浮かび上がらせて下さいました。
高岡は藩政時代に金沢の地を治めた前田家とのゆかりも深く、今回のツアーで高岡がより身近になりました。北陸新幹線の有力な立ち寄り先として、改めて認識されるべきでしょう。
敬老の日の午後、秋を感じたくて、車を山あいへと走らせました。向かった先は、越中・五箇山の相倉集落。言わずと知れた世界遺産の合掌造り集落です。
金沢からそこまで、高速道を使わず、下道で行きました。ほど良く沿道の風景を楽しみながら、一時間足らずで目的地に着きました。
三連休最終日の昼下がりですから、海外にも名がとどろく、その観光地も、観光客はそんなに多くなく、落ち着いて散策を楽しみました。
(稲刈りが間近な稲田。背後には合掌造り家屋)

点在する合掌造り家屋。黄金色に色づき、頭(こうべ)を垂れる稲田がある一方で、刈り終わった田も見られ、農家の生業(なりわい)を感じることに。ススキもあちこちで風に揺られています。
(秋の深まりを感じる相倉集落)


到着した頃は、じんわりと暑さを感じましたが、時間の経過とともに、大気が爽やかになっていくのを感じます。山里は季節が進むのも早い。そう感じたことでした。
(この日、集落は秋祭りの日でした。神社を参拝)

村の山裾にある神社の鳥居の両側に長い旗が立っています。前方に進むと、その社には、御神燈と記された提灯や幕が掲げられています。秋祭りのようでした。
境内で地元の子どもたちが駆け回り、観光客が行き来する中で、私たちも拝殿の前で鈴を鳴らし、手をたたいて参拝しました。
相倉には、実は知人がおり、茶店で数年ぶりに近況を語り合うことに。流行り病のせいで、困難が続きますが、前向きに毎日を送っていこうと心を新たにしたことでした。
帰り道。城端方面へ向かう山あいの国道304号。前を突然カモシカがダッシュで横切っていくハプニングも。目が覚めました。
五箇山周辺は、交通の便が良くなり、思いのほか近く、金沢を訪れた観光のお客様には、ぜひ紹介したい土地。その良さを再認識した小さな旅となりました。
この春、ぜひ実現したいことが一つありました。人に言いたくないような、でも、ひそかに伝えたいようなこと。それは、白山ろくにある自生のカタクリの群生地を訪ねることでした。
地元の人の協力も得て、この度それがかないました。斜面一面に広がるカタクリの花。さわやかな紫色の花の絨毯。心身が清められる光景。霊峰白山に連なる山あいにも、間違いなく春がやって来ました。
(斜面に広がるカタクリの群生地)


その群生地は、
一昨年の秋に、白山ろくぼたん鍋プロジェクトの活動の一環として、瀬波川河畔を散策した際に、地元関係者を通じて知りました。群生地は、瀬波川河畔のキャンプ場近くの登山口から歩いて5分ほど登ったところにありました。そこへ至る山道は、人一人が歩けるほどの道幅で、ごつごつとした素朴な地肌なので、危なっかしい感じもありました。
カタクリの花の園は、突然現れました。清く、可憐な花々が、斜面一面に広がっています。「わぁー、きれい」。思わず声を上げてしまいました。日々モニタリングを行う地元の人によると、花のピークは4月10日頃だったそうですが、それでも、そんなしおれた様子はなく、心から楽しめました。
このカタクリ群生地、ハイカーらの口コミで、近年人気が沸騰。花が見頃な時は、麓の林道が車で混み、群生地一帯がスポイルされるのではないかという懸念も出てきているのだそう。
私が、このブログで紹介していいのか、ためらわれるところもあるのです。観賞に訪れるのであれば、極力貴重な自然の保全を心がけることが求められます。
(新緑が爽やかな瀬波川の河畔)

所々に残雪が見られるものの、この山あいにも春が本格的にスタートしたことが分かります。木々の緑は初々しく、爽やか。緑の斜面を縫って落ちるせせらぎの水音は心地よい。
半日足らずの白山ろくへの山行きは、心身に新たなエネルギーを注いでくれました。
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