あかつき太郎の町家日記

金沢町家ゲストハウス あかつき屋をめぐる出来事や思い、人とのふれあいなどをつづるブログ。街角の話題や四季折々の風情も紹介していきます。

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「(町家の)戸の種類 幾つかあるんです」

日々町家(町屋)での営みを続け、様々な人と接していると、いろいろと学ぶことがあります。今回は、金沢市菊川1丁目で表具店を開く瀬田良三さんから、和室に用いられる戸について教わりました。
瀬田さん「同じように見えても、戸には、いくつも種類があるんですよ」。

表装された戸を簡単に襖(ふすま)と言ってしまいそうですが、瀬田さんによると、そうではなく、戸にはめこむ障子や桟の位置、形状によってそれぞれ名前があるのだそうです。
「町家も奥の深い世界だなー」。そんなふうに思いました。

(和室の戸について説明される瀬田さん)
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瀬田表具店さんには、あかつき屋に年に何回か来て頂いています。主に障子戸の貼り替えです。今回も年が明けたことを機会に2階の障子戸を貼り替えました。

瀬田さんのお店を訪ねました。瀬田さんは、和室の戸には、いくつか種類があることを手描きのデッサンを示しながら、説明して下さいました。

それによると、戸に収まる障子の位置や、障子が貼られる木の桟の間隔などによって、それぞれ呼び方があるとのことでした。
その詳細は、以下の図の通りです。

(瀬田さんが描いて下さった数種類の戸のデッサン)
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瀬田さんは、あかつき屋のコミュニティルームにある折部(おりべ)はもうほとんど製造されなくなり、見かけなくなったと、説明されました。貴重なものなのですね。

(このお宿のコミュニティルームにある「吉原」)
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「吉原」という艶っぽい名前の戸もあります。これもあかつき屋では、同じコミュニティルームと2階の客間にあります。

あまり意識せずに見ていた戸も、名前を知ることによって、その建具としての特長や歴史をも知ることができるようです。お客様には今後、この建物のみならず、今回教わった戸についてもご紹介させて頂こうと思います。

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心に響く人形店ご主人の話

(前回のつづき)
あかつき屋にご宿泊中のオーストラリアからのお客様のリクエストにこたえるため、26年ぶりに加藤人形店さん(金沢市割出町)を訪れた私。図らずもそのお店の84歳になるご主人から、いろいろとお話をうかがう機会を得ました。

ご主人の加藤清さんは、オーストラリアからお越しになったケイティさんの三人のお孫さん用の名札に、それぞれの名前と生年月日を毛筆で書き上げた後、問わず語りにご自身のお仕事のことや、店のことなどを話して下さいました。

(木の板に毛筆で名前を記す加藤さん。生粋の職人さんです)
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このお店は、三月の桃の節句には、ひな人形、五月の端午の節句の時季に向けては、武者人形を販売されています。そうした中で、加藤さんは経営者としてのお立場のほかに、職人さんの顔もあり、先述の人形とセットとなる木の名札に名前を書くお仕事に当たられる一方、絵師として色紙や壁掛けなどに武者や童女などの絵を描いておられます。

私たちの今回の訪問では、木の名札を求めるものだったのですが、話が加藤さんの絵の仕事にまで広がったこともあって、加藤さんは、時代装束をまとった人物を描いた壁掛けを極めて良心的なお値段で譲って下さったのでした。

(加藤さんが描いた絵を収めた壁掛けを手に持つ加藤さん・左とピーターさん)
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加藤さんは私たちが、そのお仕事について興味を示したこともあってか、朴訥とお店のご商売のことなどを語って下さいました。

「昔ほど(五月)人形は売れんようになってね」。加藤さんは、ちょっぴりさみしそうにおっしゃいました。少子化の影響もあるのでしょうが、それよりライフスタイルの変化や、豪華な武者人形などは、昨今の住宅事情に合わなくなったことが、理由としてあるようです。

さらに大きな課題があります。後継者の問題です。加藤さんには、二人の子供さんがいらっしゃいますが、いずれも女性で既に嫁いでいらっしゃるそうです。
長年地道に営んできたお店を今後どうするか、岐路に差し掛かっているとも言えるようです。

でも、私たちは、加藤さんの来し方をうかがっていると、そのご商売は絶えることなく、これからも続いていってほしいと願わずにはいられませんでした。

聞けば、加藤さんのおうちは、代々職人さんをしてこられているのでした。ご先祖は傘職人、お父さんの代では、染め物のお仕事をなさってこられたのでした。

(豪華な武者人形を背後にしてお話しされる加藤さん)
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そんな手仕事職人の気風は今の加藤さんからも十分感じられるもので、木の板に名前を毛筆で書いているご様子は、真剣な中にもどこか楽しそうにも見えました。
色紙などに描かれた絵も、おおらかで明るく、見ていて楽しい気分になりました。

ただ、この世界もご多聞に漏れず、機械化の波にも翻弄されているのでした。木の名札に記す名前などは、現在手書きすることはほとんどなく、コンピューターなどでこぎれいに記す時代になったのでした。その台もプラスチックを使ったモダンなものにとって変わりました。

長年日々こつこつとお仕事されてきた加藤さん。その生粋の職人さんが26年前に、名札に精魂込めて書き上げた息子の名前が、今いっそう存在感をもって見えました。

表具屋さん「寒の水でないと」と備蓄

一年で最も気温が低くなる「大寒」。この時季がもってこいであると、ある作業をされる職人さんがいらっしゃいます。
金沢市菊川町の瀬田表具店さんでは、毎日の仕事で使う「水」を大量に水道から汲み、備蓄されているのです。

「寒の水は腐らず、長持ちするんやは。この仕事には欠かせません」と瀬田さんは2㍑入りのペットボトルに60本ほど水を蓄えられました。

(寒の水をペットボトルに蓄えられた瀬田さん)
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瀬田表具店さんは、金沢町家であるあかつき屋が2年余り前、開業前のリニューアルに当たって、障子やふすまなどを張り替えてもらったところ
その際、表具屋さんの仕事などをいろいろと教えてもらいました。

(表具の作業で使う糊。水は重要です)
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表具屋さんはふだん、障子やふすまの張替え、掛け軸の修復などを行っていますが、その作業では、決まって糊(のり)を使います。その糊を溶かすのが水で、糊の粘り気をちょうど良い具合にするには、水は重要になってきます。貼る物によって、糊の濃さが異なり、その調整をするのが、水です。

「腐った水を使うと、糊がべちゃべちゃになり、紙にくっつかなくなる」と瀬田さん。その点、寒の水は腐らず(雑菌が繁殖せず)、とても仕事がしやすいのだそうです。
そして、仕事の要となる水は、大寒の頃に水道水から一気に汲み上げ、ペットボトルに蓄えておくのです。

(ペットボトルに水道水を入れる作業)
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(水でいっぱいになったペットボトルは、段ボール箱に入れて保管します)
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この日は朝9時半頃から、瀬田さんは中学三年生のお孫さんとともに2㍑入りのペットボトルに水道水を入れる作業に当たり、2時間ほどで60本分を詰め終えました。
この後、表に水を汲んだ日付を記した段ボール箱にペットボトルを詰めて、地下室に保管しておきます。この水は3年はもつとのことです。

年中行事とも言える大寒の水の備蓄を終えて、瀬田さんはほっとした表情。しばし雑談しましたが、瀬田さんは「こうしてとっておいた水は、災害が起こった時に飲み水としても使えるんやは」と水は防災の役目も果たすのだと、笑顔を浮かべながら話されました。

掃除と空気入れ替え 家守る基本

【前々回のブログ(11月8日付)の続きです】
町家ゲストハウスの障子、ふすまの張り替えをして頂いている瀬田表具店のご主人は、ペットボトルに入った水について話された後、今度は大きな障子紙を広げてみせられました。
「ここにカビがついているんですよ」と指をさして示しながら、「家を長持ちさせるには、掃除をよくすることと、空気の入れ替えをよくすることなんですよ」と、表具師の立場から諭すように語られました。

(カビが点在する障子紙)
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瀬田さんによると、障子紙やふすまは、湿気やほこりを吸い込む性質があるそう。障子紙が湿気を含んだままにしておくと、黄色くカビがつくそうで、「ここにいくつもしみがついているでしょ。2年ほどたって腐った跡ですよ」と、カビの場所を指し示しました。
障子紙やふすまは、時間がたつと、ほこりを吸い込んで目詰まりを起こし、その結果、湿気も取りにくくなるのだそうです。
表具屋さんの話から、家を良い状態で保つには、ふだんの掃除や空気の入れ替えが大事であることが、良く分かりました。

(真ん中部分がはげたふすまの取っ手)
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瀬田さんは、今度は細長い棒を私の前に見せてくれました。これは、ふすまの取っ手部分です。
「真ん中の辺りが、はげているでしょ。ここを持って、しょっちゅう開け閉めするから、黒い部分がはげて、白っぽくなったんです」。
そして、ふすまや障子戸には、開け閉めする正規の個所と方法があることを、近くにあった戸を使って自らお手本を示して下さいました。

 和の雰囲気、日本の文化
最後に、瀬田さんは、仕事で何回も出入りしている町家ゲストハウスについて、こうおっしゃいました。
「木や壁、障子を見ていると、あの家は住んできた人が、大切に暮らしてきたことがよく分かります。家が古くなったら、古くなった良さがある。古い良さを見てもらえばいいですよ」
さらに、こう続けました。
「(あの町家には)和の雰囲気が感じられる。日本の文化が見て取れます」。
神妙に、静かに聞き入るだけでした。










表具屋さん、水にこだわる

ゲストハウスへと生まれ変わる町家の障子やふすまの張り替えをして頂いている瀬田表具店さん(金沢市菊川1丁目)を訪ねました。ちょうどご主人は、お仕事中でしたが、あいさつを交わした後、ご主人は、やおら目の前にあるペットボトルに入った水について語り始めました。
(瀬田表具店のご主人)
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2㍑入りの大きなペットボトルには、水が一杯に入っていました。
「これは、3年前の水ですよ。3年たっても色は変わらないんです」。
よく理解できないまま聞いていると、続けてこうおっしゃいます。
「寒の水は、腐らないんで、(ペットボトルに入れて)保存して使っているんですよ」。

(寒の水が入った2㍑入りペットボトル)
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ご主人と、その息子さんからも、うかがった話を整理すると、こういうことなんです。
水は、糊(のり)を作る時に、よく使う訳ですが、これに雑菌が入ると良い糊ができない。
1年で最も気温の低い寒の時期の水を使えば、雑菌が発生しにくい、良い糊ができるのだそうです。

こんな話は以前にも聞いたことがあるな、と思い出したのは、酒造りや、かきもち作りのこと。いずれも、やはり雑菌が繁殖しにくい寒の時期に作業のピークを迎えます。

 流し台や縁の下に大量に保管
「水は何か特別なものですか」と尋ねると、「寒の時期なら水道の水でいいんです」とご主人。
寒の水はふだんの仕事でふんだんに使うので、その時に取った水がペットボトルに入れて50-60本ほど蓄えてあるのだそうです。
その水の保管場所は、温度変化の少ない、台所の流し台の下や、縁の下だとか。

息子さんは、こう補足して下さいました。
「掛け軸や屏風などは、(少なくとも)50年、100年もたさないといけないです。そのために、糊は吟味して作っています。(水にもこだわるのは、お客さんに良い品をお届けするために)長年伝わる職人たちの知恵ですね」

【瀬田表具店さんの話は続きます】








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