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あかつき太郎の町家日記

金沢町家ゲストハウス あかつき屋をめぐる出来事や思い、人とのふれあいなどをつづるブログ。街角の話題や四季折々の風情も紹介していきます。

あかつき屋のホームページはこちらです。

追悼 志村けんさん、金沢和傘職人も

弥生3月も最終盤になって、衝撃的なニュースが飛び込んできました。日本のお笑い界の大御所・志村けんさんが、新型コロナウイルスの感染で亡くなったというのです。子どもの頃からテレビでお馴染みで、随分と楽しませてもらった希代のエンターテイナーの志村さん。それが、今世界を震撼させているウイルスの犠牲者になるとは。その訃報に接したときは、言葉を失いました。

一方で、同じ3月29日に、金沢では、得がたい人物が95年の人生の幕を閉じました。金沢和傘の職人松田弘さんです。こちらは、報道によると、老衰だったそうですが、金沢の伝統工芸の一つ、金沢和傘を長年支え、91歳まで現役で働いてこられました。

二人の人物。活動したフィールドは異なりますが、その秀逸な仕事ぶりと、尋常でない仕事への情熱は、私たちの記憶に深く残るものでした。

志村さんは最後は、お笑い界の重鎮として君臨しましたが、私が子供時代、テレビの『8時だよ 全員集合』で、最初‟見習い”として出てきたのを覚えています。その後、『東村山音頭』で大ブレーク。それからの活躍は、言うまでもないことです。

彼の生涯をルポしたNHKの「ファミリーヒストリー」などによると、ドリフターズに入って間もない頃、楽器運びなどの下働きをさせられ、食事では、ドリフのメンバーが食べ終わったラーメンの残り汁をすすって空腹を満たしたこともあった、というエピソードが紹介されていました。

「なにくそ」「今に見ておれ」。そのハングリー精神が、今日の成功の原動力になったようです。彼の笑顔の陰には、火の玉のような熱い魂と底知れない向上心が、あったのでした。

一方、和傘職人だった松田さんの場合は、大業を成し遂げての大往生と言ってもいいのではないでしょうか。和傘職人の二代目として、精進を重ね、雪国の風雪に耐えうる丈夫さと、鮮やかな色あいの和傘を世に送り出したのでした。

実は、私が松田さんを身近に感じることになったのは、営むあかつき屋のお客様が6年前、松田さんのお店を訪ね、松田さんが精魂込めて作った和傘を買って来られるという一件があったからでした。

松田さんは既に高齢ながらも、かくしゃくとそのお客様と応対し、傘づくりのご苦労などを話されたのでした。今思えば、私も松田さんにお会いしておけば良かったと悔やまれます。
しかし、その技は今、三代目の次男・重樹さん(61)に継承されており、金沢の貴重な伝統工芸は輝きを失うことなく、身近に存在することになったのです。

様々な人生が交錯する年度末3月。全く予期しなかった感染病の難題と対峙する毎日ですが、生を燃焼させた二人の人物の訃報に接し、今を悔いなく生きることの大切さを思い知ったことでした。

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日本の伝統満喫 オランダ人カップル

日本の伝統について改めて見直すことが、外国人のお客様を通じてあります。今回は、大相撲でした。

オランダ人カップルが、あかつき屋にお泊まりになり、お二人との会話を通じて大相撲の魅力を再発見しました。お二人は、東京にご滞在中、両国国技館で開催中の大相撲夏場所をご観戦。その模様について熱心に写真に撮ってこられたのでした。

(お泊まりになったオランダ人カップル=写真掲載了解済)
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お二人が夜の団らんで披露して下さった写真には、関取衆たちの土俵入りや力士の土俵上での所作、そして熱闘の様子などが数多くとらえられていました。

(大相撲夏場所のシーン=お客様ご提供写真、以下同じ)
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こうして、そのお写真から改めて大相撲を見ると、相撲には長年受け継がれてきた様式美や静と動の対照、勝敗が決まった後の力士の沈着冷静な振る舞いなど国技と言われる相撲ならではの特長が感じられます。
お二人は、そんな一部始終をご覧になり、「とても印象深かった」とおっしゃいました。

(初夏を感じさせるお庭)
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お二人は、金沢では、町家の魅力にふれたいと、このあかつき屋を投宿先に選ばれました。
一夜明けたあかつき屋。お座敷の向こうには、緑輝くお庭が見えます。彼は、大相撲を撮った同じカメラで、くっきりと浮かび上がったお庭にレンズを向けておられました。

寿司大好きタイのお客様と再会

この4月は、タイのお客様が数多くお越しになりました。タイは4月が旧正月であり、職場や学校などが長期のお休みになるからです。

その中で、お客様の幾組が、あかつき屋にリピーターとして再訪されました。とてもうれしいことです。そのうちのお一人のSupanidaさんは、一昨年に職場仲間とこちらにお越しになった方で、今回はご家族で再訪されました。

二年前に来られたSupanidaさんのグループは、とても印象に残っています。というのは、金沢ではその時、いくつもの寿司屋さんを回り、お寿司を堪能されたからです。
今回の旅でも、Supanidaさんは新たな寿司店を訪ね、全国屈指の寿司どころ金沢の魅力を再認識されました。

(幸兵衛寿司さんで記念撮影されるタイのご家族=お客様ご提供写真)
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タイのお客様の多くが、金沢滞在中にお寿司屋さんへ行かれます。そしてお宿に帰って来ると、「(食べた)お寿司は、とても新鮮で、おいしかった」と一様に話されます。
金沢訪問の目的が、おすしを食べることではないかと思えるほど、タイの人たちからは、お寿司への強いこだわりが感じられます。

今回のSupanidaさんも金沢旅行の目的の一つは、新たな寿司店を発掘することでした。で、ご滞在中、初めて赴かれたのは、幸兵衛寿司さん(橋場町)です。

ここで、マグロやウニ、イクラなどが並んだ上にぎりのセットなどを召し上がられました。その美味とお店の若主人さんらとの会話も楽しまれ、忘れられない一夜になったようでした。

お客様を通じて、金沢の寿司(店)への造詣が深まる毎日です。

うれしい再訪 オランダ人女性写真家

年度末の慌ただしい時期にあかつき屋では、うれしいお客様をお迎えしました。オランダ人の女性写真家Elodie Hiryczuk(エロディー・ヒーリックスック)さんです。エロディーさんは2年前にご主人とあかつき屋に宿泊されており、その時以来のご滞在となりました。

今回来日されたのは、AIT(Arts Initiative Tokyo)が主催するレジデンシー・プログラムに顕著な活躍をする海外アーティストの一人として招かれたもので、先日、東京・代官山の会場で講師としてスピーチされています。

(2年ぶりにあかつき屋にお越しになったエロディーさん)
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今回金沢に2年ぶりにお越しになったのは、この街がアートがあふれる歴史文化都市という性格を備えているからでした。
二泊されている間、エロディーさんといろいろとおしゃべりしました。

「マ(間)に興味をもっているんです」とエロディーさん。間には、空間、時間の両面の意味合いで日本独特のものであり、哲学的なニュアンスを含んでいると、彼女は考えているからでした。
エロディーさんは、自然や建築物の中で、人が視覚を通してどのように空間を体験するかについて興味を抱いており、歴史的なもののほかに、現代建築においても、金沢は格好の題材に恵まれているのでした。

エロディーさんは今回、兼六園のほか、県伝統産業工芸館や鈴木大拙館も訪れ、その空間と展示物に視線を注がれました。

(エロディーさんが興味をもったひな人形型のチョコレート)
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(金沢の高木屋さんの和菓子・紙ふうせん)
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また、お土産物にも、興味が惹かれました。ひな人形をかたどったチョコレート菓子や「紙ふうせん」(髙木屋さん製)と呼ばれる和菓子とも出会いました。

かわいらしさとともに、繊細さや面白味を兼ね備えたお菓子。これも日本独特のものと感じられたようです。

「もつ鍋は任せて!」と教頭先生

(前回の続き)
あかつき屋での石川算数サークルさんの新年会で圧巻だったのは、もつ(ホルモン)鍋でした。このお宿では、寒い冬場にお客様がしばしば調理される鍋料理。その中で、今回初めてもつ鍋がお目見えしたのでした。
そのお鍋が食卓にすき焼き鍋と並んで登場した時は、思わず声を上げてしまいました。もつ独特の形状と香り。メンバーの食欲をわしづかみにしました。

今宵そのもつ鍋を登場させた立役者が、サークルのメンバーにいました。金沢市諸江町小学校で教頭を務める太田秀人先生です。太田先生は、大のお料理好き。この新年会では、もつ鍋を提案され、下ごしらえから当日の調理まで大活躍されたのでした。

(十八番のもつ鍋を披露された太田教頭先生
                =写真掲載了解済)
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太田先生は、もつ鍋には、かなりのこだわりがありました。お肉の仕入れには、三口新町にある「肉のみやざき」さんに行かれ、豚と牛の二種類のホルモン肉を買われました。

豚ホルモンについては、臭みをとるため、鍋に生姜とネギを入れてゆでて油抜きし、牛ホルモンについては、醤油と酒で一晩漬け込んだものをあかつき屋に持って来られました。

あかつき屋では、まず「創味のつゆ」をベースにしたお鍋に豚ホルモンを煮込み、続いてキャベツやニラを入れ、ニンニク、鷹の爪(唐辛子)で味付けました。さらに、下ごしらえした牛ホルモンを入れて、仕上げました。

出来上がったもつ鍋を私も少し頂いたのですが、ホルモン独特の臭みはほとんどないものの、もつの味がしっかりしみたお鍋でした。

このもつ鍋を食べ終わった後、太田先生は今度は、このだし汁を使ってもつ煮込みラーメンを作られました。台所に立ち、再度豚ホルモンを入れて煮込み、十分煮えた後、ラーメンを入れられました。
これも勧められ、少し頂きました。

(ラーメンを入れる前に再度豚ホルモンを煮込む)
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(ラーメンを入れて出来上がり)
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ホルモン肉をベースに様々な食材が凝縮された濃厚スープ。それが見事にラーメンとマッチしていました。(どんなお味になるのかと)最初抱いた懸念は吹き飛び、思わず「おいしい」と声を上げてしまいました。
「ふつうに、ラーメン屋さんで出せる味じゃないですか」と太田先生に話したら、先生はにこやかに応えておられました。

今回、私は遠慮がちにそのもつ料理を頂いたのですが、次は別の機会を設けて頂いてじっくりと味わってみたいと思ったことでした。